モズの高鳴き
地鳴きと警戒の声
秋の高く鋭い一声は、なわばりの宣言です。9月から11月にかけて、雌雄がそれぞれ別の越冬なわばりを構えるときに、開けた場所の高い所から続けて鳴きます。
聞きなし
日本野鳥の会は「キチキチキチ」「ジュン、ジュン」と記し、秋の声として「キーィキーィ」を挙げています。金属を弾いたような鋭さが芯にあり、一続きが数秒、間を置いてまた始まるという出方をします。モズは体が小さくても声はよく通り、姿より先に届きます。文字の当て方は資料で揺れますが、高さと鋭さ、繰り返しの長さがそろえば同じ声として扱えます。
さえずりか地鳴きか
ホオジロの一筆啓上のような繁殖期の雄のさえずりとは、季節からして違います。高鳴きは秋に雌雄それぞれが出すなわばり宣言で、さえずりとも地鳴きとも呼びにくい位置にあります。春先には他の鳥の声をまねて低く長く続ける「ぐぜり」があり、高く短い声を繰り返す高鳴きとは別物です。ぐぜりは近くでないと聞こえないほど小さく、高鳴きは遠くまで届くという差もあります。
いつ・どこから聞こえるか
9月から11月、田んぼと用水路の縁や河川敷のヨシ原と草地、林のふちといったやや開けた環境から聞こえます。声の主は電線や杭、梢のてっぺんなど周囲を見下ろせる高い一点にとまっているので、聞こえた方向の高い所を順に見ると姿に行き当たります。朝のうちがいちばん多く、冬に入ると回数が落ちていきます。声が静まった一帯は、なわばりが決まったあとです。
似た声との違い
甲高い声という点ではヒヨドリとオナガが紛れます。ヒヨドリの「ピーヨ」は一声ずつが丸く、上下に大きく振れるのに対し、モズは同じ高さの音を細かく刻んで並べます。オナガの「ギューイ」は濁りを含み、数羽から十数羽の群れで重なるので、単独で長く続く高鳴きとは出方が違います。刻みか、伸ばしかを最初に聞き分けます。
この声で何をしているか
冬を越す採餌の場所を、一羽で確保するための宣言です。モズは秋に雌雄が別々の縄張りを構え、この声で同種の侵入を防ぎます。声が続く間はその一帯に別の個体が入りにくい状態で、翌春まで同じ範囲を使うこともあります。「モズの高鳴き七十五日」は初霜までの日数を言う古い言い伝えですが、年ごとの気候差が大きく、暦として当てにするには根拠が足りません。