ハシブトガラスとハシボソガラス
大きさと形で迷う組
嘴の太さと額の段差で決まります。声と歩き方は補助に回り、日本鳥学会「日本鳥類目録 改訂第8版」はどちらも別種として載せています。
並べる2種
ハシブトガラスとハシボソガラスは、どちらも全身が黒く、単独でいれば大きさの見当も付かないため、色でも体格でも分かれません。街で見かける黒い鳥をひとまとめの名前で呼んでいることが多いのは、この2種が同じ場所に出るからです。全国鳥類繁殖分布調査からは、市街地に多いのがハシブトガラス、農地や河川敷に多いのがハシボソガラスという傾向が読み取れます。ただしどちらも両方の環境に出るので、場所は決め手になりません。
決め手になる1点
見るのは嘴の太さと、額から嘴へ続く線の一点です。ハシブトガラスは嘴が太くて上に湾曲し、額が急に立ち上がって段差になります。ハシボソガラスは嘴が細くまっすぐで、額から嘴の先までなだらかに続きます。横向きの顔が明るく見えていれば輪郭の段差だけで分かれるので、羽の色艶が読めない距離でも決まります。声も同じ向きで確かめられ、澄んだ「カー」と濁った「ガー」のうち、前者がハシブトガラスのカアにあたります。
その1点が使えない条件
逆光のシルエットでは、額の段差も嘴の太さもつぶれます。夕方の空抜けや、電線と屋根の上にいる個体を真下から見上げる形は、黒い輪郭だけが残る角度です。羽づくろいで頭の羽を立てているときも、額の線は別の鳥のように変わって見えます。声のほうも、数十羽が入り乱れる群れではどの個体が鳴いたのかを結びつけられません。曇りの日の遠い枝先でも、同じことが起きます。
よくある取り違え
大きさで決めようとするのが最も多い取り違えです。並んでいない限り体の大きさは比べられず、1羽だけを見て大きいからハシブトだと決めると外れます。冬の農地にはミヤマガラスが加わり、嘴が細くて基部が白っぽいため、ハシボソガラスとまぎれます。歩き方も補助どまりで、ハシボソガラスは地上をよく歩き、ハシブトガラスは跳ねることが多いという傾きにとどまります。
決められないときの引き下がり方
顔の向きと光が合わないまま粘らないことです。横顔が見えず声も聞こえないなら、「カラス」までで止めるという記録の仕方があり、種を決めないまま残しても観察は成り立ちます。「嘴の太さは不明・逆光だった」と見えなかったものを書き添えると、同じ場所で次に会ったときに続きから見られます。一瞬のシルエットで決めた記録は、あとから直せません。決められなかった日があること自体は、観察の失敗ではありません。