餌づけをやめると鳥は生きられない
餌と関わり方の思い込み
冬の給餌をやめても、生存率はほとんど変わりませんでした。米国ウィスコンシンでの実験で、25年続いた給餌を止めた場所と、一度も給餌していない場所とを比べた結果です。
言われていること
人の出す餌に慣れた鳥は自力で採らなくなり、やめた年の冬に飢えてしまうという言い方です。だから始めたら続けなければならない、旅行の間も切らせない、という責任論が後ろに続きます。逆向きに、やめられないのだから最初から関わるべきでない、という主張の支えにも使われます。同じ思い込みが賛否の両側で持ち出されているのが、この項目の面倒なところです。
分かっていること
Brittingham と Temple のウィスコンシンでの実験が、この問いに正面から答えています。25年間給餌していた場所で止めても、アメリカコガラの月あたり生存率は84%で、一度も給餌していない対照区の85%とほぼ変わりませんでした(1992)。同じ研究者の1988年の報告では、冬に給餌のある個体群の越冬生存率は69%、対照区は37%です。効き目はあることと、依存が生じないことは同時に立ちます。
どこまで確かめられているか
確かめられているのは、北米のコガラ1種を冬に調べた範囲です。試験地は積雪のある地域で、給餌を止めたあとに個体がほかへ移った可能性まで分けて追ってはいません。日本の身近な種や、冬でも餌の残る暖かい土地へそのまま当てはめられる数字ではなく、国内で同じ設計の比較はまだ行われていません。数字がどこまで効くのかを、先に見ておくところです。
なぜ広まったか
止めた冬に姿が見えなくなる、という観察が根拠に据えられます。餌の出る場所が消えれば、鳥はほかへ移りますから、見えなくなったことが飢えの証拠に読み替えられます。自分の行為が生き死にに関わっているという理解は人の側にも受け入れやすく、手から食べさせるような関わり方を続ける理由にも、始めない理由にも使われてきました。どちらの側も、同じ前提に乗っています。