カラスは恨みを覚えて襲う

種にまつわる思い込み

覚えてはいますが、蹴るのは巣を守るためです。人の顔を覚えることは実験で確かめられており、人が蹴られる時期はヒナのいる数週間に集中します。

言われていること

一度追い払ったり巣に近づいたりすると顔を覚えられ、あとで待ち伏せされて襲われる、という話です。「カラスに恨まれた」という言い方で語られ、同じ道を通るたびに狙われる、何年も忘れないといった尾ひれも付いています。後ろから頭を蹴られた人の体験と結び付き、過去の仕返しとして説明されることが多く、心当たりを探して数年前の出来事に理由を求める語られ方もします。

分かっていること

Marzluff ら(Animal Behaviour 2010)はシアトルで、捕獲のときにかぶっていた仮面を2.7年以上覚え、見かけると叱り声と群れで追い回すモビングが起きたと報告しました。杉田昭栄ら(2010)はカラスが人の顔で男女を見分けることも示しています。一方、人が蹴られるのは繁殖期の巣の防衛で、東京都の解説では3月下旬から7月上旬、とくに4月下旬から6月に集中します。覚える力と、蹴る理由は別の話です。

どこまで確かめられているか

確かめられているのは、覚えて反応するところまでです。仮面という同じ顔を何度でも持ち出せる形にしたことで、覚えている相手が顔かどうかを切り分けて調べられました。観察できるのは叱り声とモビングという行動で、恨みにあたる気持ちを測った研究は見当たりません。蹴られる側から見ても、目の前の一羽が過去のあの一羽かは、外から決められません。東京都の解説では蹴るのは脚で、くちばしは使いません。

なぜ広まったか

繰り返しが、狙い撃ちに見えるためです。人は毎日ほぼ同じ道を歩くので、ハシブトガラスが巣の近くを通る人に反応すれば、何日も続けて同じ人が蹴られることになります。時期が過ぎればやむのに、そちらは記憶に残りません。顔を覚えるという実験の結果が恨むという人の言葉に置き換えられたことも重なりました。近づかない線の引き方は巣に近寄るにまとめています。