沢沿いの林道
山と林
沢の音は、鳥の声を消します。水音の大きい区間では耳が使えないので、林道を歩きながら、水から少し離れて声の聞こえる場所を選び直すことになります。
どんな場所か
山あいの沢に沿ってつけられた林業のための道で、片側が斜面、片側が谷という形が続きます。谷筋は木が高く伸び、日の当たる時間が短いぶん虫が多く、夏鳥のさえずりがここに集まります。歩きながら耳を使う場所ですが、瀬や滝の近くでは水音が声をすっかり覆います。聞こえる区間と消える区間が交互に来るので、歩く速さのほうを変えます。同じ山でも里山の雑木林のように平坦に歩ける林とは、道の性格が違います。
季節ごとに何がいるか
4月下旬から6月がこの場所の季節です。オオルリやセンダイムシクイが渡ってきて谷筋でさえずり、ミソサザイとキセキレイは一年を通して沢にいます。環境省と日本自然保護協会の全国鳥類繁殖分布調査(2016-2021年)は、キビタキやサンショウクイなど樹林にすむ種が増えたと報告しています。夏の終わりにさえずりが止むと、秋冬の沢は静かで、声ではなく姿を探す場所に変わります。
歩く時間帯
日の出の前後に歩き始めるのがこの場所の形です。夜明けからの2〜3時間が、縄張りを知らせるさえずりの山です。そのあとは声がまばらになります。谷は日の差し込むのが遅く、朝は思ったより暗いので、足元が見える明るさになる時刻を先に調べます。水音の小さい区間で立ち止まり、耳を空けると、同じ道でも聞こえる種類が増えます。日が高くなったら、歩く場所を沢から尾根寄りへ移す手もあります。
足元と服装
濡れた石と落ち葉が最も滑ります。沢沿いは路面が乾かず、苔の乗った石やコンクリートの上では溝の深い靴底でも流れます。舗装の無い林道は落石で石が転がっているため、上を見る癖と、斜面側を歩かない位置取りを決めておきます。標高が上がるほど朝は冷え、歩き始めと日が高くなってからで体感が変わるので、脱ぎ着できる重ね着にします。手が空くよう、荷物は背負う形にします。
立ち入りの線
通行止めの表示より先へ入らないことが、この場所の第一の線です。林道はスギとヒノキの植林地へ続く作業道でもあり、ゲートや「関係者以外立入禁止」の看板は、作業と災害の両方を指しています。雨のあとは沢が増水し、渡れた場所が渡れなくなります。落石注意の標識が続く区間では立ち止まらず、車が来る前提で道の端を歩くようにします。崩れた法面の下は通り抜けるだけにし、行き先を家に伝えてから入ります。