ロココ
西洋の古典
1715〜1770年ごろ/フランス
どんな様式か
教会や王の広間ではなく、貴族の私室と庭のための絵。権威ではなく恋の駆け引きや遊びを主題にする。名は貝殻をかたどった室内装飾ロカイユから来ていて、壁の飾りと同じ軽さで絵も作られていると考えると分かりやすい。画面はおおむね小さい。
見分け方
とにかく色が淡い。桃色・水色・クリーム色が中心で、黒い影がほとんど出ない(拡散光に近い光)。輪郭は丸く、うねる曲線が服のひだにも木の枝にも繰り返される(S字構図)。前のバロックの重い明暗と並べると、影の弱さで見分けられる。
いつ、どこで
ルイ十四世が没した1715年以降、宮廷の中心がヴェルサイユからパリの邸宅へ移ったことで生まれた。ヴァトーが1717年に雅宴画という新しい種類の絵でアカデミーに認められ、ブーシェ、フラゴナールへ続く。革命に向かう時代の中で軽薄だと批判され、新古典主義に取って代わられた。
代表的な画家
ヴァトー、ブーシェ、フラゴナール(ぶらんこ)、静物と台所を描いたシャルダン、肖像のヴィジェ・ルブラン。同じ時代でもシャルダンだけは淡い色に寄らず、卵や水差しのような質素なものを落ち着いた色で描いていて、様式の幅が見える。
解説動画: 貝殻の装飾から始まった軽やかさと、雅宴画・閨房画の時代/山田五郎 オトナの教養講座
名前の由来と装飾の話: ロココはフランス語のロカイユ(貝殻や石を貼り付ける装飾)が語源だと説明している。庭に人工の洞窟を作り、内側に貝殻や石ころをびっしり貼ったのが元で、建物本体は簡素でも貼り付けたものの方が凝っている。語そのものは1825年に、時代遅れの様式を指す否定的な言葉として使われ始めたという。
どこを見るか: 覚え方として三つ挙げている。まず猫足家具。次に白・クリーム・ライトグレーに金を合わせた明るく軽く華やかな色で、バロックの重厚さがない代わりに良くも悪くも軽い。そして貼り付け装飾で壁と天井がつながり、どこまでが壁か分からなくなる室内。天井画には下から見上げるだまし絵が使われる。
何を描いた絵か: 主題は二つの流れに分かれるという。一つは屋外で人が楽しむ雅宴画と田園画、もう一つは私室での着替えや化粧を描いた閨房画。18世紀に屋外の絵が増えたのは、ヨーロッパの人間が自然を怖がらなくなり、自然をそのまま楽しむ余裕が出てきたからだと解釈している。歴史画が衰え、風俗画が主役になっていく時代でもある。
三人の画家と、終わり方: 三大巨匠としてヴァトー、ブーシェ、フラゴナールを挙げる。ヴァトーはバロックからロココへの橋渡しで、役者の哀愁まで描いた。ブーシェは王の求めに応じた絵を量産し、人物がみな同じ顔になる。フラゴナールの《ぶらんこ》はわざと隙を作るコケトリーを何重にもひねった絵だと読み解き、こんなことを続けていれば革命は起きると述べる。王政に近かった本人が革命後に立場を失ったことにも触れている。