まわりを1周する

側面と背面で、屋根と壁の作りを確かめる。

正面で柱間と入口を数え終えたら、次は建物の側面へ回り込みます。妻入か平入かは、正面に立っただけでは決めきれません。向拝や千鳥破風が正面へ差し出されていると、棟が左右に通る平入の建物でも正面に三角形が立ち上がって見え、妻入と見誤ります。側面に立ち、大棟がどちら向きへ通っているかを目で追ってはじめて、入口の向きと屋根の向きの関係が決まります。

側面まで回ると、妻の三角形がようやく全体で視野に入ります。妻の二辺は破風板という板で縁取られ、二枚が合わさる頂点を破風拝、各板の下端を破風木尻、その間を腰と呼びます(コロンビア大学版JAANUS)。この三つの名を知っていると、三角形のどこを見ているかを言い分けられます。

三角形の中に何が収まっているかも、側面でしか判別できません。屋根の造りからそのまま生まれ、裾が軒先まで続く入母屋破風と、屋根の斜面の途中に別棟として据えられ、裾が途中で切れる千鳥破風は、正面からは重なって見分けにくく、側面から裾の行き先を追うと分かれます。辺が曲線を描く唐破風も同じ列に並びます。破風拝の下には懸魚が下がり、三角形の壁の面は裏に板を張った木連格子で塞がれ、奥を見通せません。

側面を過ぎて背面まで回ると、正面とは違う表情が出ます。山口県下関市の功山寺仏殿は、身舎の周りに裳階を巡らせた禅宗様仏殿で、裳階の背面の幅を前面よりわずかに広く取っており、室町時代に構造が自由になっていく最初の表れとされます(文化遺産オンライン)。正面だけでは気づけない、前後の寸法の違いが時代の手がかりになります。

民家でも、背面だけに表れる造りがあります。主屋の屋根の軒を延ばして下屋柱の列まで葺き下ろす下屋は、正面に設けると縁側のような外部空間になりますが、多くの建物では背面に組み込まれます(コロンビア大学版JAANUS)。背面を見ずに正面だけで建物の奥行きを測ると、下屋の分だけ短く見積もってしまいます。

正面・側面・背面の三つを順に回ってはじめて、1つの建物の屋根と壁の作りがひとまとまりで見えてきます。

この節に出てくる図鑑の項目

出典