屋根と妻図鑑

切妻造(屋根の形)

切妻造は、大棟から前後へ落ちる二枚の面だけでできた、いちばん単純な屋根の形です。大棟から二方向へ落ちる屋根面だけでできた形です。棟と平行な側には軒が長く伸び、棟と直交する妻側には三角形の妻壁が壁面のまま立ち上がります。四隅へ下る隅棟も、面の途中で折れる降棟も出ません。奈良県の東大寺転害門は「切妻造…

寄棟造(屋根の形)

寄棟造は、大棟の両端から四隅へ隅棟が下り、どの向きにも妻壁を持たない屋根の形です。水平な大棟から四方向へ屋根面が落ちる形です。大棟の両端からは四隅へ向かう隅棟が下り、面は台形二枚と三角二枚の計四枚になります。妻壁が無いため、どの方角から見上げても屋根が軒までひと続きに見えます。奈良県の唐招提寺金堂は寄棟造の本瓦葺…

入母屋造(屋根の形)

入母屋造は、上半分が切妻、下半分が寄棟という、二段構えになっている屋根の形です。上部が切妻、下部が寄棟という二段構えの屋根です。棟の付近だけが二方向へ落ち、その下で四方へ広がる面に接続します。棟は水平な大棟が一本、四隅へ下る隅棟が四本、妻の三角の下端から降りる降棟が加わります。京都府の平等院鳳凰堂の中堂は阿弥陀堂で…

宝形造(屋根の形)

宝形造は、水平な大棟を持たず、正方形の平面の上で隅棟が頂の一点へ集まる屋根です。水平な大棟が無く、隅棟がすべて頂点の一点へ集まる形です。平面は正方形が基本で、四枚の三角形の面が中心へ向かって立ち上がります。頂には露盤や宝珠を積んだ飾りが載ります。国宝の指定では…

裳階(屋根の形)

裳階は、本来の屋根の下に付けて、外から数える屋根の数を一つ増やす、小さな屋根です。本来の屋根の下へ、もう一段低く回した庇状の小屋根です。建物の周囲を巡り、内部の床を増やさないまま外観の重だけを増やすため、五重塔や三重の塔では数え方が食い違います。壁や柱の根元を雨と日差しから守る役目もあります。奈良県の薬師寺東塔…

錣屋根(屋根の形)

錣屋根は、棟から軒まで一枚で流さず、途中へ四方に回る一段の区切りを入れた屋根です。大棟から軒まで一枚の面で流さず、途中に一段の区切りを設けて下を葺き下ろす形です。区切りは建物の四方に回り、上下それぞれに軒が出るので、軒が二重に重なった姿になります。上を寄棟造に葺けば四方へ、切妻造に葺けば二方へ落ちます。…

向拝(屋根の形)

向拝は、屋根の中央が正面へ張り出し、参拝する人が立つ階段の真上を覆う屋根の部分です。仏堂や社殿の屋根の中央だけが、庇のように正面へ張り出した部分です。真下には階段と、参拝する人が立つ場所があり、階隠の一種として階段が濡れるのを防ぎます。屋根は二本か四本の向拝柱で支えられ、背面に付く例もあります。…

反り屋根(屋根の形)

反り屋根は、棟の近くは勾配が急で、軒先へ向かって下に凹む曲線を描く屋根の形です。棟から軒へ向かって下へ凹む曲線を描く屋根です。棟の近くは勾配が急で、軒先へ近づくほど緩みます。屋根面だけでなく軒先の線も中央が下がって両端が上がるため、正面から見ると軒が弓なりに見えます。山口県の功山寺仏殿、神奈川県の円覚寺舎利殿…

起り屋根(屋根の形)

起り屋根は、棟から軒へ、反り屋根とは逆向きに外側へふくらむ曲線を描く屋根の形です。棟を頂点に屋根面が外へふくらみ、軒へ近づくほど傾きが強くなる形です。同じ勾配で直線に葺いた屋根とくらべると、中ほどが持ち上がって見えます。大工はふくらみをむくりを何寸付けるかという言い方で扱い…

越屋根(屋根の形)

越屋根は、煙や湿気を抜く開口を覆って、大屋根の棟の上に載るもう一段の小さな屋根です。大屋根の棟をまたいで載る、短い棟と軒を持つ小屋根です。下の屋根に開けた穴をこの小屋根が覆い、その側面が煙と湿気の出口、そして光の入口になります。小屋根そのものは切妻造や寄棟造の形で葺かれ…

破風板(破風と妻)

破風板は、切妻や入母屋の妻側で、垂木の木口を隠しながら斜辺に沿って取り付ける板です。屋根の斜めに下る辺に沿って立てる板で、二枚が頂上で合わさります。合わさるところを拝みと呼び、その下に懸魚が下がります。板の役目は垂木や母屋の木口を隠し、雨を切ることで、切った木口をそのまま外気にさらさないための造作です。…

入母屋破風(破風と妻)

入母屋破風は、入母屋造の妻で、上に載る切妻の部分がそのまま三角形になった破風です。入母屋造の上半分は切妻なので、その妻面が屋根の一部としてそのまま三角形に現れます。二辺は破風板で縁取られ、頂には懸魚が下がります。三角形の下の辺にあたるところで下の寄棟の屋根と交わり、そこから先は軒先まで屋根が続きます。…

千鳥破風(破風と妻)

千鳥破風は、屋根の斜面の上に、位置も数も設計で決めてあとから据えた三角形の破風です。屋根の面に据える三角形の小さな妻で、下の屋根とは別の小屋を組んで載せます。二辺を破風板で縁取り、頂から懸魚が下がる作りは大きな妻と変わりません。内側に部屋や窓が入るものと、面だけを立てたものがあり…

唐破風(破風と妻)

唐破風は、中央が上へ起き、両端が反る曲線でできた、遠くからでも輪郭で分かる破風です。中央がふくらみ、両端で反り上がる曲線の破風です。軒先に付けて庇のように張り出すものを軒唐破風、屋根を直角に向けて向拝の上へ据えるものを向唐破風と呼びます。頂には懸魚の一種である兎毛通が下がり…

懸魚(破風と妻)

懸魚は、妻の三角形の頂や左右の下がりで、棟木や桁の木口を隠すために下げる板です。破風板が合わさる拝みの下に下げる彫りのある板です。頂に下がるものを本懸魚、左右の下方に下がるものを降懸魚と呼び、板を留める飾りを六葉と樽の口と言います。時代が下ると本体の左右に鰭と呼ばれる薄い彫りが付き、輪郭が横へ広がっていきます。…

木連格子(破風と妻)

木連格子は、入母屋や切妻の妻壁に張る、裏を板で塞いで縦横を等しく組んだ格子です。破風板で囲まれた妻の三角形を、縦と横を等間隔に組んだ格子で埋めます。桟の間隔はおおむねそろい、目が正方形に近いのが普通です。格子の裏には板を張るので、向こう側は見通せません。上端は破風の斜辺に沿って切りそろえられ…

妻入(破風と妻)

妻入は、棟と直角の側から入る建て方で、屋根の三角の妻壁が真正面に立ち上がります。棟と直角に交わる側、つまり妻の側に入口を開いた建て方です。屋根の形そのものは問わず、切妻造でも入母屋造でも、妻側に出入口が来ればこう呼びます。正面に立つと破風の三角が真向かいに見え、棟は視線の奥へ向かって退いていきます。…

平入(破風と妻)

平入は、棟と平行な側から入る建て方で、建物の正面には軒が水平に長く伸びて見えます。入口が棟と平行に走る平の側に開いている、決まりはそれだけです。正面に立つと軒の水平線が左右へ長く伸び、屋根の三角は視野から外れます。棟は左右方向に通り、建物の奥行きは正面からは読めません。長野県の仁科神明宮本殿、京都府の賀茂別雷神社本殿…

本瓦葺(葺くもの)

本瓦葺は、平らな瓦を並べ、継ぎ目に半円の丸瓦をかぶせて組む、古い形の瓦屋根です。平瓦を並べ、隣り合う継ぎ目に丸瓦をかぶせて交互に葺く方法です。平瓦はゆるく反った長方形、丸瓦は半円の筒で、二種類の部材が別々に載るのがこの葺き方の骨格です。日本書紀は崇峻天皇元年、西暦588年に百済から瓦の工人が渡ったと記し…

桟瓦葺(葺くもの)

桟瓦葺は、平瓦と丸瓦を一枚にまとめた波形の瓦を並べて、屋根を軽くした葺き方です。平瓦の部分と丸瓦の部分をひと続きにした、断面がゆるいS字の瓦を並べる葺き方です。一枚の中に谷と山があるので、隣と噛み合わせるだけで面がつながります。屋根面の凹凸は浅く、影も薄いのが見た目の性格です。…

檜皮葺(葺くもの)

檜皮葺は、ヒノキの樹皮を重ねて竹の釘で留め、輪郭がやわらかく仕上がる葺き方です。材はヒノキの樹皮です。立木から採った皮を少しずつずらし、厚く重ねていきます。一枚ずつ竹釘で下地へ留め、層を積み上げて厚みを作ります。樹皮は薄くしなやかなので、反りや起りの付いた曲面にも素直に沿います。京都府の清水寺本堂…

杮葺(葺くもの)

杮葺は、厚さ2ミリから3ミリに割った木の板を、竹釘で留めながら重ねて葺く屋根です。サワラやスギなどを割った、厚さ2ミリから3ミリの薄い板を重ねる葺き方です。板を数センチずつずらしながら竹釘で留め、幾層も積んで屋根面を作ります。挽かずに割って作るため、木目に沿って水が流れます。奈良県の室生寺金堂、京都府の慈照寺観音殿…

茅葺(葺くもの)

茅葺は、ススキやヨシなど、屋根を葺くために刈る草を束ねて厚く積み上げた屋根です。材は草です。ススキ・ヨシ・チガヤなどを束ね、下から順に積み上げて厚く葺きます。束を竹や縄で下地へ締め付け、軒先の断面で数十センチの厚みまで重ねます。棟の納め方には地域差が大きく、草を伏せる形、竹で押さえる形、芝を植える形などが並びます。…

銅板葺(葺くもの)

銅板葺は、銅の薄い板を折り曲げて継ぎ、年を経ると表面が緑青におおわれる葺き方です。銅の薄板の縁を折り、隣どうしを噛み合わせて留めていく葺き方です。長方形の板を並べて横目地を一直線にそろえる一文字葺、屋根の流れに沿って細い角材を入れる瓦棒葺などの割付があります。板が薄くて軽いため、曲面や小さな屋根にも回せます。…

鴟尾(屋根の上の飾り)

鴟尾は、瓦葺の大棟の両端に立つ、沓を伏せたような輪郭の、内側が空洞になった飾りです。本瓦葺の大棟の両端に、左右一つずつ据える大ぶりな飾り瓦です。屋根に接する側を頭部、上へ伸びる側を尾部と呼びます。輪郭は沓を伏せたような左右対称の曲線で、内側は空洞です。素材は瓦のほか金銅製があり…

鬼瓦(屋根の上の飾り)

鬼瓦は、棟の端に立って瓦の木口を塞ぐ装飾瓦で、鬼面のものも蓮華文のものも含みます。棟の先端で瓦の列が途切れる場所に立てる、厚みのある板状の瓦です。裏は棟の中へ差し込む形になっていて、雨の入り口になる木口を塞ぐ役目と飾りを兼ねます。正面の文様は鬼面だけでなく、蓮華文・雲文・家紋・無文まで幅があり…

鯱(屋根の上の飾り)

鯱は、魚の胴に龍か虎の頭を載せた、想像上の獣の飾りで、棟の両端で一対になります。魚の胴に龍か虎の頭を継いだ姿で、頭を下に、尾を上に向けて棟の端へ据えます。背には鋭い鰭が列になって並び、胴には鱗が刻まれ、尾は大きく反り返ります。大棟の左右に一つずつ、顔を向かい合わせて置くのが決まりで、片方だけということはまずありません。…

千木と鰹木(屋根の上の飾り)

千木と鰹木は、屋根の両端で交叉する千木と、棟に水平に並ぶ鰹木の一組の呼び名です。千木は棟の両端でX字に交叉して突き出る2本の材、鰹木は大棟の上に棟と直角へ並べる断面の丸い横木です。千木は屋根面から斜めに立ち上がり、鰹木は棟に沿って等間隔に置かれます。本数も太さも社殿ごとに決まっており、島根県の出雲大社本殿…