鴟尾

屋根の上の飾り

時代: 飛鳥・奈良

鴟尾は、瓦葺の大棟の両端に立つ、沓を伏せたような輪郭の、内側が空洞になった飾りです。

形

本瓦葺の大棟の両端に、左右一つずつ据える大ぶりな飾り瓦です。屋根に接する側を頭部、上へ伸びる側を尾部と呼びます。輪郭は沓を伏せたような左右対称の曲線で、内側は空洞です。素材は瓦のほか金銅製があり、後の時代には木枠を銅板で包んだ例や石製も出ます。屋根の上で先に目へ入るのは、この空を切る輪郭です。奈良県の唐招提寺金堂に実物が残り、愛媛県の来住廃寺跡(松山市)では溝から少なくとも3個体分が出土しています。

見分けの決め手

顔が付いているかどうかを最初に見ます。鴟尾には目も口も角も無く、面と稜線で組み立てられます。四国の出土品には鰭を段で表す型と線刻で表す型があります。次に大棟の両端に一つずつ、外へ反る向きで立っているかを確かめます。唐招提寺金堂の鴟尾は西側が奈良時代で、JAANUSは8世紀の現存最古の例とします。東側は鎌倉時代のもので、実物は平成の大修理(2000〜2009年)を機に下ろされ、新宝蔵で展示されています。

取り違えやすい相手

鬼瓦と鯱が近い相手です。鬼瓦は棟の切れ目に立って木口を塞ぎ、鬼面や蓮華文など正面を向いた文様を持ちます。鯱は魚の胴に龍や虎の頭を付け、尾を空へ跳ね上げて二つで向かい合います。目や口の付いた顔が読み取れたら鴟尾ではありません。鴟尾が立つのは大棟の両端が基本で、回廊の隅のように棟が直角に曲がる所には頭が二つの双頭の例もあります。時代も違い、鴟尾は飛鳥・白鳳に広まって鎌倉期末に減り、鯱は中世以降の建物に載ります。

立つ位置

大棟と直角の向き、平側の正面から離れて見上げます。真横からでは輪郭が薄く、正面寄りに回ると沓形の張り出しが空を切って読めます。奈良県の唐招提寺金堂は、奈良時代の建物で寄棟の屋根に鴟尾を載せる唯一の例ですが、据え方は後の修理で変わった可能性が高いと奈良文化財研究所は述べます。午前と午後で順光の側が入れ替わるので、空を背にできる位置を選びます。下ろされた実物の展示の有無は寺の案内で確かめます。

読みと表記のゆれ

「しび」と読みます。由来は、JAANUSも確かな起源は不明と書きます。「鵄尾」「蚩尾」「鴟の尾(とびのお)」とも書かれ、形から「沓形(くつがた)」とも呼ばれるなど、表記も呼び名も一つに定まっていません。近代の例では、萩・明倫学舎(1935年建設)の校舎に載る鴟尾を紹介したKRY山口放送の解説者も、防火の意味があると話しています。

出典

  1. 資料・英語 JAANUS(アツミ国際奨学財団が構築、コロンビア大学メディアセンターが運営) shibi 鴟尾(JAANUS 日本建築・美術用語の英語辞典)
  2. 公的機関 大和祐也(奈良文化財研究所)(2022) 鴟尾を屋根にどうのせるか?(なぶんけんブログ)
  3. 公的機関 中川二美(奈良文化財研究所)(2015) 尻尾は1つか2つか!?(なぶんけんブログ)
  4. 論文 岡本治代(徳島県立博物館研究報告 30)(2020) 四国の鴟尾―伊予・阿波・土佐を中心に―
  5. 動画 KRY山口放送ニュース公式チャンネル 【鴟尾】学校建築には珍しい「萩・明倫学舎」~やまぐち近代建築探訪~