笠雲
特別な雲
高さ: 中層(2〜7km)
山頂に笠をかぶせたように留まる雲です。空気は流れ続けているのに雲だけが動かないのは、同じ場所で凝結と蒸発が釣り合っているからです。
どう見えるか
山頂を覆う一枚の笠に見えます。筑波大学の日下博幸らは富士山を囲むライブカメラ7台で2019年1月から2021年12月まで観測し、笠雲の主要な型が山頂に接する「接地笠」だと示しました(Weather誌、2025年)。山頂から離れて浮かぶ型は離れ笠と呼ばれ、二枚三枚と重なることもあります。
どこにできるか(高さ・どの雲に付くか)
できる場所は風上から風下へ気流が抜けていく山の頂の上です。富士山なら山頂が3776mなので、気象庁『気象観測の手引き』の中層(2〜7km)に入ります。分類の上ではレンズ雲で、WMO 国際雲図帳は同じ形の雲を巻積雲・高積雲・層積雲に認めています。同じ気流からは風下側につるし雲も生まれます。
なぜその形になるか
山にぶつかった空気は斜面に沿って持ち上げられ、山頂の上で冷えて凝結します。風下側へ下りると温度が戻るため、そこで蒸発して消えます。凝結する場所と蒸発する場所が動かないので、空気は流れ続けているのに雲は止まって見えます。日下博幸らは、接地笠になるか離れ笠になるかは湿った層の高度でほぼ決まるとしています。
似た雲との分け方
つるし雲とは、山頂に接しているか、風下へ離れて浮かぶかで分けます。レンズ雲は形につけた名前で、笠雲はそのうち山頂にかぶさる位置にあるものを指す呼び方です。流れていく高積雲とも違い、数分見ていても同じ位置から動かないかどうかが、いちばん確かな手がかりになります。離れ笠のように山頂から浮く型も真上に留まるので、風下側へ離れて立つつるし雲とは、浮いているかではなく立つ場所で分かれます。
この雲が出ている空で起きていること
山を越える強い風と、山頂付近の湿った層がそろっています。日下博幸らの観測では、笠雲は主に暖かい季節の朝、比較的強い西南西の風の日に多く、山頂付近かそれより高い高度に湿った空気の層がある日に見られました(Weather誌、2025年)。言い伝えとしての受け取り方は山に笠雲がかかると雨風に譲ります。