かけ湯は汚れを流すためだけ?
入りかたの誤解
掲示の文言では、温度に慣らす目的のほうが先に書かれています。手足からかけて温度に慣らすことと、身体を洗い流すことが、ひとつの文にまとめられています。
よく言われること
かけ湯は、身体の汚れを浴槽に持ち込まないための礼儀だと教わります。浴室の貼り紙も、かけ湯をしてから入るようにと衛生の側だけを書くことが多く、他人のためにする作法として覚えられます。そのため、洗い場で身体を洗ってから浴槽へ向かう人は、もうかけ湯は要らないことになり、順番の持つ意味も見えなくなります。
実際はどうか
環境省の掲示基準の「入浴前の注意」は、「浴槽に入る前に、手足から掛け湯をして温度に慣らすとともに、身体を洗い流すこと」と書いています。かける順序と二つの目的が、ひとつの文にまとめられているのがこの一文の作りで、温度に慣らす側が先に置かれています。洗い流す側は、厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」や浴槽水の水質基準の側から来ています。
なぜ広まったか
貼り紙の書き方が偏っていることが下地です。短く伝えたい注意書きでは衛生の側だけが残り、温度に慣らす側は落ちます。かけ湯という言葉自体も、湯をかける動作しか指していません。手足からという書き出しが省かれると、順序が持っていた意味も一緒に消えて、桶一杯を肩からかける形だけが残ります。二つのうち一つしか伝わらないまま、作法として固まります。
どう言えば正しいか
衛生と、温度に慣らすことの二つ、と数え直します。掲示のとおり手足の先からかけ始めれば、順序そのものが温度に慣らす側の手順になっています。洗い場と浴槽のどちらで身体を洗うかは洗い場と浴槽の使い分け、湯の温度そのものは浴槽の温度計の欄で確かめられます。どちらか一方だけを作法と呼ばない読み方です。