名前を調べる

見た特徴から、図鑑やアプリで候補を絞る手順。

葉の形や樹皮の裂け方といった手がかりをひと通り見終えたら、次は候補を一つの名前に絞る段です。図鑑の検索表は手がかりを一つずつ選ばせて答えに導く作りですが、写真を撮るだけで候補を示すアプリも同じ役目を果たします。Wanigasingheらの研究チームは、カナダ・アルバータ州の草地と林床54か所・119種の植物を撮った画像5,291枚を、Flora IncognitaとiNaturalistという2つの無料アプリに読み込ませて正答率を比べ、Flora Incognitaが上位1候補で79.2%、iNaturalistが66.5%にとどまり、どちらも文献の目安とされる専門家の現地調査の精度90〜95%には届かなかったと報告しています。アプリが示す名前は、図鑑で裏を取る前の候補の一つとして扱います。

同じ研究は、花や実などの繁殖器官が写った画像のほうが正答率が上がり、とくにイネ科やカヤツリグサ科のような草でその差が大きかったとも報告しています。花序の付き方や頭花の形、雌雄異株で株ごと姿が変わること、殻斗や翼果、核果と液果といった実のでき方は、葉だけの写真より手がかりが多く、候補を絞る決め手になりやすい部分です。葉だけを撮って終わらせず、花や実が付いていれば必ず一緒に撮っておくと、見返すときの候補が絞れます。

英国の研究機関UKCEH(UK Centre for Ecology and Hydrology)に所属するRiddingらの研究チームは、市民37人が「e-Surveyor」という植物調査アプリで区画内の種を記録し、専門の植物学者が同じ区画で記録した結果と突き合わせました。市民は、専門家が確認した種のうち71%を正しい種まで言い当てましたが、区画にあった種の全体では約45%しか記録できませんでした。アプリが示す大まかな生育環境の一致率は8割に達した一方、より細かい群落まで当てた一致率は25%にとどまったとも報告されています。候補は大づかみには当たりやすく、細部の見分けほど外れやすい、という傾向は覚えておく価値があります。

実際の使い方は、その場でカメラをかざすよりも、写真を撮ってから調べる順のほうが扱いやすいとされています。スマートフォンの使い方を教える吉祥寺スマホスクールは、Googleレンズの動画で、花や植物の写真を撮っておき、あとでアプリに読み込ませると名前の候補に加え、見られる場所や開花時期までたどれると説明しています。dアプリ&レビュー公式チャンネルも、カメラをかざすだけで植物や動物の名前が分かる機能として同じ使い方を紹介しています。托葉の有無や葉痕の形のように小さな部分が決め手になるときは、ハンドルーペで肉眼の見え方を確かめてから、クリップ式マクロレンズでその部分だけを拡大して撮っておくと、家に帰ってから図鑑と見比べられます。手の届かない高さの花や実は単眼鏡や高倍率ズームのカメラで撮っておき、短枝と長枝や皮刺と茎針のような枝先の違いも同じ要領で記録に残します。

やりがちな失敗は、アプリが示した最初の候補をそのまま答えにして終えることです。候補の名前が挙がったら、その名前で図鑑を引き直し、花の色だけでなく花序の付き方や葉の特徴まで一致するかを確かめます。一致しない点が残るなら、別の角度から撮り直すか、次に花や実が付く季節にもう一度確かめます。

この節に出てくる図鑑の項目

出典