木の全体を見る

樹形・幹・枝ぶりから、当たりを付ける。

木を見分けるときは、葉だけでなく、木全体の輪郭から見る段をはさむと候補が早く絞れます。米国ニューハンプシャー大学エクステンションのTutein氏(地域保全を担当するExtension State Specialist)による冬の木の見分け方の記事は、見分けの手がかりを枝の付き方(Branching)・冬芽(Buds)・樹皮(Bark)という3つの「B」の順にまとめています。葉がない季節でも、この3つを順に見ていけば候補を絞れるという組み立てで、葉のある季節に使う順番とも重なります。

全体の輪郭を分けるのは、幹がどう枝分かれするかです。カナダ・クワントレン・ポリテクニック大学のNakano氏による植物識別の教材は、主幹が1本まっすぐ伸びて側枝が全体として円錐形やピラミッド形の輪郭を作る樹形を「excurrent」、同じ太さの枝が幹から何本も出て丸みのある、または横に広がった輪郭を作る樹形を「decurrent」と呼び分け、前者の例に針葉樹のウェスタンレッドシーダーとダグラスファーを、後者の例にビッグリーフメープルとノルウェーカエデという広葉樹を挙げています。ヒマラヤスギの遠目に分かる円錐形は前者に近く、スダジイの丸く盛り上がった樹冠は後者に近い輪郭です。

輪郭の次に見るのは、地面に近い幹の数です。1本の太い幹が立つ木が多数派ですが、カツラのように根元から複数の幹が立ち上がる株立ちの姿になる木もあり、離れて見ると1本の木に見えないことがあります。何本の幹が立っているかを先に確かめておくと、次に見る樹皮や冬芽の特徴を、別の木のものと取り違えにくくなります。

幹の数を数えたら、樹皮の見え方に移ります。近づかなくても色とつやの差は見えることが多く、米国バージニア州のBlue Ridge Discovery CenterのFredericksen氏がまとめた冬の木の見分け方の記事は、アメリカブナの樹皮を灰色と白のまだら模様でなめらかなものと、イエローバーチの樹皮を薄く横方向に帯状にはがれるものとで対比しています。国内の木でも、クロマツの黒く厚い亀甲状の割れ、ムクノキの短冊状にはがれる樹皮、タブノキのなめらかな樹皮に並ぶ皮目のように、樹皮の裂け方は近づかなくても絞り込みに使える手がかりです。

同じ記事は、樹皮が似ていて迷うときの次の手がかりとして冬芽も挙げ、北米のレッドオークとホワイトオークを、芽の集まり方と先の形が鈍いか鋭いかの違いで分けると説明しています。ハクモクレンの銀色の毛に覆われた大きな冬芽のように、芽の大きさや色も遠目の輪郭に影響するので、樹形・幹の数・樹皮・冬芽という順でたどれば、葉を一枚も見る前からすでに候補のいくつかが外れています。次の段で見る葉の形・付き方・ふちは、この全体の輪郭を裏づける細部にあたります。

この節に出てくる図鑑の項目

出典