初めてで起きやすい失敗
花だけで決める・素手で触る・勝手に採る、の防ぎ方。
最初の1本の名前を言うまでにつまずく所は、花だけで決める・素手で触る・勝手に採るの3つです。先に順を決めておけば、3つはまとめて防げます。見るのは触らずに、残すのは写真と覚え書き、名前を照らすのは帰ってから、採るのはしません。この順を崩すと、3つの失敗が重なります。
木を調べる順は葉から始まります。葉の付き方が互い違いか向かい合うか、ふちがなめらかか鋸歯かを見て、冬に葉を落とすかを足し、そこから小枝・樹皮・花と実・生える場所へ広げます(ミシシッピ州立大学エクステンション)。花は手がかりの一つで、出発点ではありません。カナダ・アルバータ州の54か所・119種を撮った画像5,291枚で無料の識別アプリ2種を比べた調査では、上位1候補の正答率がFlora Incognitaで79.2%、iNaturalistで66.5%でした(Wanigasingheら 2026)。繁殖器官が写った画像で正答率は上がり、上がり幅はFlora Incognitaで8.9%、iNaturalistで17.1%でした。花が咲いていれば撮り、同じ株の葉と樹皮も続けて撮ります。
道端の草は、花の無い時期ほど近い草と重なります。野草研究所(チャンネル名)は、スイセンの苗とニラの分かれ目として、ちぎったときの香りと、引き抜いたときに球根になっているかを説明しています。香りや根まで確かめずに摘めば、取り違えに気づく手がかりを自分で捨てます。摘まないという選び方は、見分けの精度を下げません。
素手で触ると、その場では何も起きないことがあります。汁が付いた肌に日が当たってから出る反応は、アレルギーではなく、汁に含まれるフラノクマリンが紫外線と反応して細胞膜を傷めるものです(DermNet)。赤みと水疱は紫外線を浴びてから24〜48時間後に出て、治まったあとの色素沈着は年単位で残ることがあります(DermNet)。ハナウド属の汁を調べた論文では、触れた直後の数分から数時間は自覚する症状が出ず、灼熱感とかゆみは数時間後に現れます(Klimkinaら 2024)。予防の柱は、原因になる植物を避けること、肌を日から守ること、触れたらすぐ石けんと水で洗い流すことの3つです(症例報告・Morrisら 2023)。皮膚炎が出たあとは、少なくとも2日は紫外線を避けます(Klimkinaら 2024)。折れた茎から白い汁がにじむ種は白い乳液に、手についた汁で目をこすったときの手当ては汁が目に入ったときに置きました。
採らない理由は、決まりの側にもあります。国が設置した都市公園では、竹木の伐採と植物の採取が禁じられています(都市公園法11条2号)。市町村が設けた公園は各自治体の条例で決まるので、入口の掲示を先に見ます。特定外来生物は、飼育・栽培・保管・運搬が原則として禁止で、野外で捕まえたものを持ち帰ることは運搬に当たります(環境省)。その場に置いて写真と場所だけを残せば、この規制には触れません(特定外来生物の運搬)。地面の実も拾った人のものにはならず(落ちた実の持ち帰り)、指定種では花を一輪摘むところから禁止が始まります(希少な野草の採取)。
最初の1本は、触らず採らずでも言えます。花の写真に葉と樹皮を足し、場所と日付を書き添えておけば、名前は帰ってから落ち着いて照らせます。
この節に出てくる図鑑の項目
出典
- How to Identify Trees
- Evaluating species identification apps as a tool for small plot-based surveys of vascular plants in Alberta, Canada
- 【危険】あなたの身近に潜む猛毒植物7選
- Phytophotodermatitis
- Analysis of data on phytophotodermatitis caused by contact with the sap of plants of the genus Hogweed (Heracleum L.)
- Sap and Sun: A Case of Phytophotodermatitis
- 都市公園法(昭和31年法律第79号)11条
- 何が禁止されているの?(日本の外来種対策)
