通勤と散歩の道で見る

街路樹と植え込みを、毎日同じ道で見る。

通勤と散歩の道の強みは、同じ木を何度も見返せることです。まず片道のうち、信号から信号までのような一区間を決め、その中だけを見る範囲にします。範囲を狭めると、先週は固かった芽が開いた、という変化にも気づけます。次に分けるのは、歩道の上に枝を広げる高木と、腰の高さで刈り込まれた植え込みの2つです。神戸市の街路樹は高木が約10万本、中木が約14万本、低木が約410万株です(神戸市・2026年3月時点)。株数では植え込みが大半を占め、高木とは見どころも変わります。

同じ道に同じ木が並ぶのは、植える側の都合によります。1種に偏ると病害虫で一度に失うため、1つの樹種を全体の5〜10%以内に抑える植え方が都市では基本とされます(コーネル大学)。区間や交差点で樹種が切り替わるので、一区間を数えてから隣の区間へ移ると、並びの変わり目が見えてきます。

高木は、近づく前に遠目から見ます。輪郭、幹肌、葉の付き方、葉の形の順にたどると、1本ずつ図鑑を引くより早く候補が絞れます(カントーの樹木医チャンネル)。幹肌だけで決まる木もあり、トウカエデは小さくめくれて落ちる肌、イチョウは若い木で縦に筋の走る肌になります(RIE by サングラスの女)。葉が手の届く高さにあるなら、単葉か複葉か、葉序が対生か互生か、葉の形の3つを組み合わせます(Tree Boston の講習動画)。葉の付き方は花の無い時期にも使えるので、1年通う見方と合います。ソメイヨシノのように葉の付け根に小さな粒が2つ並び、幹に横縞が走る木は、葉と幹だけで仲間まで絞れます(同じ講習動画)。

植え込みは、刈り込みで花も実も落ちていることが多く、葉と、冬に葉を残すかで見ます。街路樹の手入れは高木の剪定と低木の刈り込みが柱で、植え込みは定期的に形を整えられます(東京都建設局)。低木で最も多いのはヒラドツツジで、アベリアの名で並ぶハナゾノツクバネウツギとシャリンバイが続きます(神戸市)。中木ではサザンカが最も多いため、冬に花の咲く低い木は候補の上位に置けます(神戸市)。葉のふちや厚みを見るときは、刈り込みの切り口が残る枝先ではなく、内側の葉を選びます。

1年通うと、季節ごとに見える面が入れ替わります。冬は葉が落ちて樹形がはっきりし、手がかりは冬芽と葉痕という小さな部分に移ります(英国・アイルランド植物学会の動画)。芽の付き方も対生・互生・らせんの3つに分かれ、枝の分かれる角度から見当が付きます(同じ動画)。枝ぶりが一晩で変わる朝もあります。休眠期の冬の剪定が手入れの柱で、台風に備える夏の剪定もあり、常緑樹は初夏に作業されます(東京都建設局)。冬芽をたどるなら剪定の前に見ておき、枝が落ちた後は幹肌と樹形へ見る所を移します。

やりがちな失敗は3つです。1つ目は、実や花で名前を決めようとすることです。街路樹のイチョウには実のならない雄木を植える方針が近年とられていて、銀杏を探しても見つかりません(横浜市)。2つ目は、街路樹をその土地に生える木と考えることです。ハナミズキとユリノキは北米原産、トウカエデは中国原産で、植えられた木の並びは自生の分布とは別です(横浜市)。3つ目は、根元の土に乗って見上げることです。舗装の下の土は締め固められ、土の量が足りない場所の都市の木は平均7〜10年しか生きないとされ、土の条件が良ければ50年以上が見込めます(コーネル大学)。踏む面を増やさないだけでも、同じ木を長く見続けられます。

木が危ないかどうかは、歩く側では決めません。街路樹の倒木は年間平均で約5,200本、倒木に起因する事故は年間約200件で、概ね年1回の定期巡回を基本とする点検の指針が2026年3月に出されました(国土交通省)。点検は道路管理者の仕事なので、折れた枝や傾きが気になるときは、自分で切らずに管理者へ伝えます(街路樹の管理者)。残すのは、日付と場所、全体・幹肌・葉の3枚の写真だけで足ります。冬に葉を落とすケヤキと、冬も葉のある常緑のクスノキのように、遠目の輪郭だけで言える木が増えていきます(横浜市)。

この節に出てくる図鑑の項目

出典