腹式呼吸

息と支え

お腹まわりで息を支える呼吸のしかた

どういう技術?

息を吸うと横隔膜が下がり、押し出された内臓でお腹の前と横がふくらみます。この上下の動きで息を出し入れするのが腹式呼吸です。肩と胸を持ち上げる吸い方にくらべて息が長く持ち、喉が力みにくいのが利点。寝ているあいだはほとんどの人がこの呼吸なので、新しく覚えるというより立ったままでも起きるようにする作業に近いものです。

やり方

ソファに浅く座り、片手をへその上、もう片手を胸に当てます。鼻から4拍で吸い、へその手だけが前へ出て胸の手が動かなければ腹式です。吐くときは8拍かけて細く。動きが出ないときは仰向けに寝て同じことをすると、体が勝手に腹式になります。部屋なら曲間の30秒で確かめられます。

練習のしかた

毎日3分あれば足ります。寝る前に仰向けで4拍吸って8拍で吐くを10往復、慣れたら立って同じ回数。目安は、吐き切る手前でお腹が硬くならないことです。早い人なら1〜2週間で吸えている感じがつかめますが、歌の中で自然に出るまでは1〜3か月見ておくと気が楽です。伸ばす練習はロングトーンと組むと早く進みます。

やりがちなミス

お腹を大きく突き出すこと自体が目的になると、力みが入って声が硬くなります。吸う量も多ければ良いわけではなく、吸いすぎは喉を押し上げて音程を不安定にします。歌の最中に呼吸ばかり意識すると歌詞が飛ぶので、確認は曲間と間奏だけにして、あとは体に任せてしまいましょう。

解説動画: 【ボイトレ】歌が上手くなる最強の呼吸法を伝授します。【腹式呼吸 / 胸式呼吸】/しらスタ【歌唱力向上委員会】

これさえやれば、は無い: 講師はまず「腹式呼吸さえやれば高い声が出て何でもできる」という言い方をはっきり否定します。声は喉の使い方・口の開け方・舌の使い方などが絡んで出るもので、息が原因ではない人もいる。だからこの呼吸法が全員に効く保証はしないと前置きしたうえで、とりあえず試してみようという構えで進みます。

肺は上・下・横にふくらむ: 胸式は肺という風船を上側へ持ち上げる呼吸、腹式は横隔膜が下がって下側へふくらむ呼吸。動画がもう一つ挙げるのが、肋骨が横に開く呼吸です。みぞおちの真横に手を当てて吐き切るとコルセットを締めたように狭まり、吸うと横へ大きく広がるのが分かります。

胸式が嫌われる理由: 胸式は首の前や横の筋肉で肋骨ごと引き上げるので、吸うたびに喉の前が硬くなる。普段は柔らかい部分を触りながら吸うと、その硬さがそのまま確かめられます。もう一つは吸う音が鳴りやすいこと。表現として使うぶんには有りだが、常用すると力みと疲れにつながる、という整理です。

腹式だけでも詰まる: 横隔膜は上腕の筋肉と違って自分では認識できないので、狙って動かすのは難しい。そこで腹筋でお腹をふくらませて代用しがちですが、下から圧がかかって息が出ていくことがあります。腹式を意識するほど吐きすぎて吸えなくなり、結局胸式に戻る人もいる。どれか一方向だけに寄ると問題が出ます。

三段階で歌へ持ち込む: みぞおちの横に手を当て、口から吐き切って鼻から吸う動きを歌う前に1〜2分。次に吐いて吸ってから1フレーズだけ歌う。最後に曲の中で使います。実際の歌では4割ぐらいの動きで十分で、吐くときは自分で潰さずオートに任せる。配分のイメージは上から順に1対5対4。過呼吸になりやすい人は時間を少しずつ伸ばします。