演歌
しっとり歌う
こぶしと母音の伸ばしで聴かせる日本の歌唱
どんなジャンル?
半音の少ない音階の旋律が中心で、一音の中で声を細かく揺らす装飾が曲の骨格そのものになっています。伸ばした母音を1〜3秒かけて上下させるため、真っすぐ歌うと別の曲に聞こえるほどです。語尾の消し方まで含めて型のある歌い方で、同じ旋律でも歌い手ごとに装飾の入れ方が違います。
歌い方のポイント
こぶしは喉で作るものではなく、お腹を軽く二回押す感覚で音を下から跳ね上げます。アーと伸ばしながら腹に手を当て、1秒に2回ほど押して声が波打てば形になっています。語尾は音を切らず息だけ残して消すと雰囲気が出て、揺れは遅い縦揺れのほうがなじみます。胸に手を当てて響く位置も確かめておくと安定します。
選ぶときの目安
向いているのは低い音が痩せない人です。ふだんの話し声より3〜5度低い音がかすれずに出るなら相性は良いほうです。遅い曲ほど息が長く要るので、慣れるまでは4分を超えない曲から選びます。譜面に忠実に歌うのが得意な人ほど、崩す装飾では最初に戸惑います。男性の曲と女性の曲で求められる音域がはっきり分かれるのも特徴です。
つまずくところ
装飾をすべての語尾に入れると、かえって一本調子に聞こえます。効かせどころは1フレーズに一箇所で足ります。揺らしを深くしすぎると音程正確率は下がるため、採点の場では控えめのほうが得です。喉を鳴らす歌い方で痛みが出たら休み、続くようなら耳鼻咽喉科へ相談してください。
解説動画: 「こぶし」をもっと上手に歌いたい!プロ演歌歌手による「こぶし講座」/金曜ボイスログ
こぶしは握りこぶしではない: 手を握って歌う姿から握り拳のことだと思われがちだが、語源は小さい節回しを縮めた「小節」。音をいったん上へ跳ね上げ、すぐ元の音へ戻す往復で、ゆっくり動かせば半音の行き来として聞き取れる。この往復を速くしていったものがこぶしで、カラオケの採点機能にも項目として並んでいる(こぶしの加点)。
演歌には入れる位置の法則: どこにでも入れてよいわけではなく、上向きに跳ねさせた次の音は下がるという並びが演歌の法則だと言う。同じメロディが戻ってくる箇所では、同じ位置に同じように入れる。民謡は法則が別で、伸ばした音にまずビブラートをかけてから転がすため、揺れが先でこぶしが後になる。
こぶしはどこから来たか: 起源をたどると、僧侶が経に節を付けて読む声明から浄瑠璃、さらに民謡へと流れ、そこから演歌に入ってきた表現だという。民謡にもこぶしは必ずある。古くから日本の音楽に根づいてきた節回しで、これが無いと歌がさらっと通り過ぎて物足りなく聞こえる。
遅いところから速くする: いきなり速い動きを狙わず、ゆっくり音を往復させるところから始めて少しずつ速くしていけば、入れられるようになる。音符に正確にはめ込もうとしなくてよいのも要点で、ラフに、少しゆったりめに歌ったほうが演歌らしく聞こえる。硬くきれいに声を出そうとすると、らしさが出ない。
しゃくりの長さと揺れの遅さ: 演歌のしゃくりには、小節の頭をほぼ使い切る長さで下から時間をかけ、ようやく目的の音に届く箇所がある。ビブラートも曲のテンポに合わせて相当ゆっくりで、上体ごと揺れて波ができるくらい深くかけたほうが演歌らしくなる、というのが実演で示された目安だった。