過去のリターンの見せ方

情報の罠

よくある入口: ネット広告

切り取る期間を変えれば、どんな結論も作れる

どんな手口・どんな罠?

「過去10年で年率15%」といった数字は、どの10年を切り取ったかで劇的に変わります。強気相場の底から高値までを取れば、どの商品も見栄えのする数字になります。投資シミュレーターまむすん(YouTube)は S&P500 で、1957年から2023年7月までを取ると年率約7.2%、1975年から取ると約8.6%になると示しています。

なぜ引っかかるのか

数字は客観的に見えるからです。しかし、期間の選び方という主観が数字の前段階に入っていることは、表示からは読み取れません。Koehler と Mercer の2つの実験では、広告が選別を明示しないと、初心者も金融の専門家も、成績が選ばれたものだという点を見落としました。Jain と Wu は、雑誌で宣伝された投資信託294本は宣伝前に指標を上回っていたが、宣伝後の成績は優れていなかったと報告しました。

見分け方のサイン

開始時点が不自然に区切られている(例:リーマン・ショックの底から)、税・手数料を引く前の数字、円建てかドル建てかが書かれていない。この3つは必ず確認してください。日本証券業協会の指針は、会員の投資信託の広告に、直近から3年以上の期間、税引前か税引後か、外貨建ての通貨を示すよう求め、実績の一部の強調で誤解を与える表示を慎むとしています。

こうなったらどうする

違う期間で見直してください。20年、リーマン前を含む期間、直近5年。それぞれで印象が変わるなら、その数字は再現性を持ちません。英国の FCA は、過去の成績を載せる広告に直近5年(新しい商品は全期間)と、その期間・出所の明記を求めています。相場の歴史図鑑の各項目(2000年 ITバブル崩壊など)には、実際の下落率と回復期間を載せています。

出典

  1. 論文・英語 Jonathan J. Koehler, Molly Mercer(Management Science)(2009) Selection Neglect in Mutual Fund Advertisements
  2. 論文・英語 Prem C. Jain, Joanna S. Wu(The Journal of Finance)(2000) Truth in Mutual Fund Advertising: Evidence on Future Performance and Fund Flows
  3. 資料 日本証券業協会(証券会社などが会員の自主規制団体)(2023) 広告等に関する指針(平成28年9月版・令和5年4月一部改正)
  4. 公的機関・英語 Financial Conduct Authority(英国の金融行為規制機構) COBS 4.6 Past performance
  5. 動画 投資シミュレーターまむすん(YouTube。終盤に証券会社の紹介がある) 【新NISA対応】平均リターンの落とし穴 誰も教えてくれないS&P500・NASDAQ100・レバナスの本当のリターン