笑裏蔵刀

敵戦計

計の順: 第十計

笑裏蔵刀は、相手を信じさせ安心させながら、裏で備えを整えて動く計。

計名と解語(原文と書き下し)

笑裏蔵刀。「信而安之、陰以圖之、備而後動、勿使有變」(信じて之を安んじ、陰かに以て之を図り、備えて後に動き、変あらしむる勿かれ)。

解語の意味

解語は、相手を信じさせて安心させ、ひそかに図り、備えてから動き、変が起きぬようにせよと述べ、末に「剛中柔外也」と添える。うち「剛中柔外」は周易・兌卦の彖伝「剛中而柔外」から「而」を除いた形だが、借りたかは原文から言えない。按語は「兵書云」として、辞が卑くて備えを増すのは進む前触れ、約なく和を請うのは謀りと引く(同句は十一家注孫子・行軍篇にある)。敵の巧言令色はみな殺機の現れだと結ぶ。

名前のもとになった故事

按語は二つの例を挙げる。宋の曹瑋は渭州を治め、号令が厳しく西夏人に恐れられた。ある日、客と碁を打つ最中に、数千が叛いて西夏の境へ逃げたと物見が告げ、諸将は色を失った。瑋は談笑を変えず物見に「吾が命だ、口外するな」と言い、西夏人は己を襲うものと見て皆殺しにした。もう一つは句践が夫差に仕えた例で、按語は久しく夫差を安んじさせる意だったと述べる。

故事と成立でどこまで確かめられるか

曹瑋の話は、宋史の曹彬伝が載せる子・瑋の条に近い筋があるが違いもある。宋史では、叛いた戍卒が夏に入ったと告げられた瑋が碁の最中に「吾使之行也」と言い、夏人は叛者を斬って首を境に投げた。按語は自らこれを「臨機応変の用」と呼ぶ。史記は句践が臣に、妻が妾になると請うたと書くが、按語の「久しく安んじさせる」に当たる句は確かめていない。

よくある言い換えとのずれ

動画(八重あさひ、ぶくろいけちゃんまな)は、陸遜がへりくだって関羽を油断させた話を例にするが、按語にはない。三国志・陸遜伝は、陸遜の書を読んだ羽が謙下の意に大いに安んじ、もはや疑う所は無くなったと書く。英語の動画(China Tales)は龐涓が孫臏を魏に招き足を断たせる話を語る。史記にも龐涓が孫臏を呼び、才を恐れて足を断つ刑にかけたとあるが、動画の鬼谷の師は史記の同じ巻に無い。動画(本要約家「レイ」)は秦王暗殺を企てた荊軻も挙げるが、按語にはない。

解説動画: 「銀河英雄伝説」にみる兵法三十六計、第十計「笑裏蔵刀」(VICEVOX解説)/八重あさひ

陸遜と関羽の話: 孫子の「辭卑而益備者、進也」を引き、陸遜が関羽にへりくだって近づき、関羽が守りを樊城攻めへ回したという筋を、脚色した掛け合いのせりふで語る。

解説動画: ○○で接して油断させろ!笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)【0から学ぶ兵法三十六計(10/36)】/ぶくろいけちゃんまなの刑法解説チャンネル【サブチャンネル】

職場への言い換え: 同じ陸遜の話を、関羽を褒める挨拶状を送った筋で語り、職場で相手を褒めて食事に誘う話へ広げる。

解説動画(海外・英語): EP02:Smile with a Hidden Dagger | The Art of War and Thirty-Six Stratagems | China Tales/China Tales

龐涓と孫臏の話: 龐涓が孫臏を魏に招き、偽の手紙で内通に仕立てて両足を断つ刑に至らせる筋を語る。鬼谷の師や侍女など脚色の多い語りで、史記・孫子呉起列伝にはこの鬼谷の場面は出てこない。