李代桃僵
敵戦計
計の順: 第十一計
李代桃僵は、避けられない損失は軽い部分に引き受けさせ、重い部分を守る計。
計名と解語(原文と書き下し)
李代桃僵。「勢必有損、損陰以益陽」(勢い必ず損あらば、陰を損して陽を益す)。
解語の意味
解語は、形勢に必ず損が出るのなら、陰を損して陽を益すと述べる。陰と陽が何を指すかは、解語も按語も示さない。按語は損の語を使わず、敵と味方にはそれぞれ長短があり、全勝は得がたく、勝負の決め手は長短の比べ方にあると述べる。短をもって長に勝つ秘訣として上・中・下の馬の当て方を挙げ、兵家に独特の詭謀で常の理では測れないと結ぶ。
名前のもとになった故事
計名の四字は、楽府詩集・巻二十八の古辞『雞鳴』の句「蟲來齧桃根、李樹代桃殭」(虫が桃の根をかじり、李が桃に代わって倒れる)と字面が近い。詩は結びの二句で樹木と兄弟を並べている。ただ按語はこの詩に触れず、挙げるのは上・中・下の三等の馬を入れ替えて当てる話で、書名も人名も出さない。名が詩から来たかは三十六計の頁から言えない。
故事と成立でどこまで確かめられるか
按語の「以下駟敵上駟、以上駟敵中駟、以中駟敵下駟」は、史記・孫子呉起列伝で孫子が田忌に告げた馬の当て方と、駟の語と順がほぼ重なる。史記は馬の足に大差はなく上・中・下の別があったとし、「一不勝而再勝」で千金を得たと書くが、按語は勝ち負けも田忌・孫子の名も書かない。同じ話を指すとは按語から断定できず、史記との突き合わせによる推定である。
よくある言い換えとのずれ
動画(八重あさひ)は、高級な桃を虫から守るため安い李に虫を集める話と説明し、田忌の馬の競走を例にする。動画(ぶくろいけちゃんまな)は「トカゲのしっぽ切り」に例え、ハンニバルの戦いや商品の値引き、恋愛でわざと負ける話へ広げる。按語が例に挙げるのは馬の当て方だけで、桃と李の話も、責任を負わせる話も、解語と按語には出てこない。
解説動画: 「銀河英雄伝説」にみる兵法三十六計、第十一計「李代桃僵」(VICEVOX解説)/八重あさひ
名の由来と田忌の馬: 名の意味を「高級な桃を虫の害から守るため、安い李の木に虫を集める」と説明し、中国史の例に田忌の馬の競走を挙げる。桃が高級で李が安いという話は動画の説明で、詩の句にそう書かれているわけではない。
解説動画: ○○を見せて相手を誘い込め!李代桃僵(りだいとうきょう)【0から学ぶ兵法三十六計(11/36)】/ぶくろいけちゃんまなの刑法解説チャンネル【サブチャンネル】
「トカゲのしっぽ切り」への言い換え: 名を「李が桃の代わりに倒れる」と訓読し、「トカゲのしっぽ切り」に例えて、ハンニバルの戦いや商品の値引き、恋愛でわざと負ける話へ広げる。