順手牽羊

敵戦計

計の順: 第十二計

順手牽羊は、大軍が動けば生まれる小さな隙を、見逃さず利用する計。

計名と解語(原文と書き下し)

順手牽羊。「微隙在所必乘、微利在所必得。少陰、少陽」(微かな隙は必ず乗ずる所に在り、微かな利は必ず得る所に在り。少陰、少陽なり)。

解語の意味

解語は、小さな隙には必ず乗じ、小さな利は必ず得よと述べ、末に「少陰、少陽」と添える。この二語が何を指すかは解語にも按語にもなく、注釈者の読みが割れるかは確かめられていない。按語は、大軍の動く所には隙が多いと言うが、どちらの軍かは書かない。隙に乗じて利を取るのに「不必以勝」(勝ちを必ずしも要しないと読める)とあり、勝っても負けても使えるとする。

名前のもとになった故事

按語に人物名・書名はなく、個別の故事は挙げない。名のもとになった逸話は、確かめられた資料の範囲では見当たらない。台湾の教育部『成語典』は語の本を礼記・曲礼上の「效馬效羊者右牽之」(贈る馬や羊は右で牽く作法)とし、頁が挙げる書証で最も古い元・尚仲賢『単鞭奪槊』には「順手牽羊一般牽他回來了」とある。三十六計との関係は、その頁に書かれていない。

故事と成立でどこまで確かめられるか

維基文庫の頁で解語と按語の原文は確かめたが、頁に注記は無い。南斉書の王敬則の言に「檀公三十六策」の句があるが、書物の『三十六計』を指すかは言えない。李興斌の論文(2018)を紹介する新京報の記事は、計名が元明清の俗語だとして清代成立の可能性が高いと伝えるが、順手牽羊の初出は挙げない。動画2本の羊の大群の由来話には、出典が示されない。

よくある言い換えとのずれ

教育部『成語典』は語義を、機に乗じて他人の財物をついでに持ち去る喩えとし、用例の『黃繡球』は「趁火打劫、順手牽羊」と並べる。按語が言うのは、大軍の動く所に生じる隙に乗じて利を取ることで、財物を持ち去る話は出ない。動画(八重あさひ、ぶくろいけちゃんまな)は、羊を堂々と連れ去った話を由来に置き、転じて大軍の統制の隙を突く策と説く。

解説動画: 「銀河英雄伝説」にみる兵法三十六計、第十二計「順手牽羊」(VICEVOX解説)/八重あさひ

羊の由来話: 名の由来を「羊の大群から一匹を堂々と連れ去ったが誰も咎めなかった」話とし、大軍の統制の隙を突く策に転じて説明する。出典は示されない。

解説動画: 敵の○○は気付かれないように削げ!順手牽羊(じゅんしゅけんよう)【0から学ぶ兵法三十六計(12/36)】/ぶくろいけちゃんまなの刑法解説チャンネル【サブチャンネル】

企業・恋愛への言い換え: 同じ羊の由来話を語り、企業の人材の引き抜きや恋愛の場面に当てはめる話へ広げる。