ウィンウィン交渉

ゲーム理論と交渉

ウィンウィン交渉は、広めたとされる本の著者が避けていた語のいきさつをたどる項目。

よく言われること

フィッシャーとユーリーの『Getting to Yes』(1981年)が「ウィンウィン(win-win)交渉」という言葉を広めた、としてしばしば紹介される。

原典では何と書いてあるか

ハーバード大学の交渉学者マイケル・ウィーラーによれば、著者の一人ウィリアム・ユーリーは、自分とフィッシャーは交渉における勝者と敗者という発想そのものを取り除きたかったのであり、「ウィンウィン」という言葉を明示的に使うと絵空事のように響くことを恐れて、あえてこの語を使わなかったと述べている。著者たちが実際に用いたのは、立場ではなく利害に注目し、客観的な基準で合意を目指す「原則立脚型交渉(principled negotiation)」という語である。

どこがずれているか

「ウィンウィン」という語を『Getting to Yes』が生み出し広めたかのように紹介されることがあるが、著者自身の証言によれば、この語は意図的に避けられていた。本の中心にある考え方は、勝ち負けという枠組みそのものを離れ、立場ではなく利害に注目するという「原則立脚型交渉」であり、「ウィンウィン」という語はのちに周辺で定着した呼び方である。

なぜそう広まったか

「ウィンウィン」という語の方が「原則立脚型交渉」より短く分かりやすく、双方にとって良い結果を目指すという本の趣旨を一言で言い表せるため、書名や中身の紹介の中で後から広く使われるようになったと考えられる。

原典に沿って言うなら

『Getting to Yes』が説くのは、立場ではなく利害に注目し客観的な基準で合意をめざす「原則立脚型交渉」であり、「ウィンウィン」は著者たちが本文中であえて避けていた語である。