しっぺ返し戦略は常に報復せよという教え

ゲーム理論と交渉

「しっぺ返し戦略」は、報復の勧めとして広まった戦略をもとの説明に戻す項目。

よく言われること

ロバート・アクセルロッドのコンピュータ・トーナメントで最も高い成績を収めた「しっぺ返し」戦略から、相手の裏切りには常に報復せよというのが最強の戦略だという教えが広まっている。

原典では何と書いてあるか

アクセルロッドは、しっぺ返し戦略の強さを、最初は必ず協力する(nice)・裏切られたら一度だけ報復する・相手が協力に戻ればすぐ許す(forgiving)・分かりやすい、という複数の性質の組み合わせによるものだと説明した。Rapoport・Seale・Colman(2015、PLoS ONE)の追試では、トーナメントの形式や評価基準を変えると、しっぺ返し戦略は必ずしも最も高い成績を収めなくなることが示されている。

どこがずれているか

裏切りには常に報復するのが最強の戦略だという単純化した形で広まることがあるが、アクセルロッド自身が挙げた強さの理由には、最初に協力すること(nice)や、相手が協力に戻ればすぐに許すこと(forgiving)という、報復とは別の性質が含まれている。また後年の追試では、しっぺ返し戦略の優位はアクセルロッドが設定した特定のトーナメントの条件に左右されることも示されている。

なぜそう広まったか

「しっぺ返し(tit-for-tat)」という名前自体が報復を連想させやすく、トーナメントで勝ったという分かりやすい結果とあいまって、寛容さという性質が省かれたまま、報復の勧めとして広まりやすい。

原典に沿って言うなら

アクセルロッドが見出したのは、協力から入り、報復は一度きりにとどめ、相手が改めれば許すという組み合わせの強さであり、単に常に報復することを勧めた結論ではない。