四面楚歌

故事とことわざ

四面楚歌は、孤立を指す四字熟語を、原典が描く心理戦に戻す項目。

よく言われること

「四面楚歌」は、周囲を敵に囲まれて孤立無援になることを表す四字熟語として広く使われる。

原典では何と書いてあるか

『史記』項羽本紀によれば、垓下で漢軍と諸侯の兵に幾重にも包囲された項羽の陣営で、夜、四方から漢軍の陣地で楚の歌が歌われるのが聞こえ、項羽は「漢皆已得楚乎、是何楚人之多也」(漢は皆すでに楚を得たるか、是れ何ぞ楚人の多きや)と大いに驚いたと記す。

どこがずれているか

周囲を敵に囲まれること自体を指す言葉として広まっているが、原文が描いているのは単なる包囲ではなく、漢軍が楚の歌を歌わせ、項羽と兵に楚はもう漢に降ったのかと思わせて戦意をくじいた、心理戦としての場面である。物理的に囲まれていることよりも、聞こえてくる歌によって項羽が受けた心理的な衝撃こそが、原文の記述の中心にある。

なぜそう広まったか

「四面」「楚歌」という語の組み合わせが視覚的・聴覚的に分かりやすく、垓下での項羽の最期という逸話とともに広まる中で、心理戦という具体的な仕掛けの部分が省かれ、孤立無援の状況一般を指す四字熟語として定着した。

原典に沿って言うなら

『史記』が描くのは、漢軍が楚の歌を歌わせることで項羽の戦意をくじいた心理戦の場面であり、「四面楚歌」は単に敵に囲まれている状態だけを指す言葉ではない。