戦場の霧

戦争論

戦場の霧は、クラウゼヴィッツの術語として引かれる語を原文に戻す項目。

よく言われること

「戦場の霧」(戦争の霧、fog of war)とは、戦場では確かな情報が乏しく、判断に要る材料の多くが見通せないことをいう。クラウゼヴィッツが使った言葉として紹介されることが多く、戦場にある不確定要素をまとめて指す言葉として説明される。英語の fog of war と並べて語られ、日本語では「戦争の霧」とも言う。その語の元とされる一文は、『戦争論』第一篇第三章にある。

原典では何と書いてあるか

『戦争論』第一篇第三章の一文は、戦争の行動の基礎にする事柄の四分の三が「……liegen im Nebel einer mehr oder weniger großen Ungewißheit」(大なり小なりの不確実性の霧の中にある)と述べる。直後の段落は、普通の理性だけでは真実に届きにくく、平均的な成功には鋭い判断力が要ると続ける。

どこがずれているか

クラウゼヴィッツの著作に「Nebel des Krieges」や「Kriegsnebel」という語は出てこない、とオランダの雑誌『Militaire Spectator』の論考は述べる。あるのは第一篇第三章の一文にある「Nebel(霧)」の比喩で、直後は、不確実さの中で判断の勘によって真実を探り当てる鋭い知性が要る、という話に続く。術語として立てた語ではない。

なぜそう広まったか

この言い回しを広めた功は、1896年3月24日にアルダーショットで「The Fog of War」と題して講演したロンズデール・ヘイル大佐(1834〜1914)に帰される、とオランダの論考は書く。講演は『タイムズ』紙が予告し、同紙にこの語が載った最初でもある。英訳の「霧」は、1873年のグレアム訳が clouds(雲)で、1976年のハワードとパレット訳が fog だ。

原典に沿って言うなら

クラウゼヴィッツが第一篇第三章で述べたのは、戦争での行動の材料の四分の三が大なり小なりの不確実性の霧の中にあり、そこで真実を探る判断の勘が問われる、ということまでである。「戦場の霧」も fog of war も、この一文の霧の比喩を後の世が語に言い換えたもので、原典の言葉として引くなら、この一文を引くのが正確である。

解説動画(海外・英語): On War – Carl von Clausewitz | Full Summary, Analysis, and Key Ideas Explained/POWER & PAGES

fog of war をクラウゼヴィッツの語として紹介: friction(摩擦)の話に続けて "what he calls the fog of war" と述べ、fog of war をクラウゼヴィッツ自身が使った語として紹介する。

解説動画: 【クラウゼヴィッツの】戦争論【10分ちょい】/越後屋

『戦争論』の重要語として説明: 「戦場の霧」を『戦争論』の重要語に数え、戦場における不確定要素全般を指す語だと説明する。