1語ずつ高速表示で読む

読む速さの思い込み

単語を1つずつ高速に出せば眼を動かさず速く読めるという説

よく言われること

「単語を1語ずつ同じ位置に高速で出せば、眼を動かす時間が省けて速く読める」と言われ、分速の目標が示されます。視線を移す動作が読みの無駄なので、そこを機械が肩代わりすれば眼を動かさずに読めるという説明です。表示の速さは数字で指定でき、少しずつ上げると慣れて理解も追いつくと案内されます。紙では真似できない、機械だからできる読み方だとされます。

実際はどうか

読んだ先を隠して戻り読みを封じると理解が損なわれる、と直接に測った実験があります。目が戻るのは下手さの表れではなく、取り違えを直す修復のはたらきです。1語送りの表示はそれを機械的に奪います。別の検証では理解が落ちるうえに眼の疲れが増えたと報告されています。短い語句の確認と文章を読む作業は、分けて考える必要があります。

なぜ広まったか

眼を動かす時間を足し合わせると大きな数に見えるので、そこを削れば速くなるという計算が成り立ちそうに思えます。文字が次々に流れてくる画面は読めている感じを強く出しますし、表示の速さを自分で上げられる操作も受けました。眼の動きを無駄と見る点で眼を速く動かす速読術と地続きです。小さな画面に収まるという利点も後押しになりました。

どう言えば正しいか

「眼を動かさなければ速く読める」ではなく、「短い語句の確認なら速く出せるが、文章の理解には向かない」と言えば実際に近いです。途中で戻れることが理解を支えているので、読み返しを妨げない形が要ります。表示に速さを決めさせるより、読み手が速さを握るほうが理解を守れます。長い文章を片づけたいなら、拾い読みのほうが何を捨てているかが見えます。

確かめられ方

Schotter ら が2014年に、読んだ先を隠して戻り読みを封じると理解が損なわれることを示し、この表示方式の前提を直接に否定しました。Benedetto ら2015 の検証でも、理解が落ちて眼の疲れが増えることが報告されています。いずれも実験室で短い文章を読ませた測定で、本を1冊読む場面や長く使い続けた場合は調べられていません。

解説動画(海外・英語): Do Speed Reading Apps & Techniques Really Work? - College Info Geek/Thomas Frank

1語ずつ出す表示: 速読の技を検証するシリーズの2本目で、単語を1つずつ同じ位置に次々と出す表示方式を扱います。眼を動かす必要がなくなるから速く読めるという説明ですが、研究を並べると読解には向かないという結論です。もとは画像を一瞬ずつ映す装置にさかのぼり、戦時中は航空機の識別訓練、1960年代には学校で読む速さの訓練に使われたと紹介されます。

残り2つの主張: 同じ動画では、視野を広げて周辺視でも読めるという説と、内なる声を消せば速くなるという説も検証されます。前者は、注視点から数文字離れた内容はほとんど答えられなかった検証を挙げて退けます。後者は、読んでいる間に声の信号が出ることを示した測定や、音を鳴らす・声を出させるなどして抑えた実験で、どの場合も理解が下がったと述べます。

全部の語が流れ込む: 普通の読み手は語を等しく追わず、内容語に多く止まって機能語は流します。1語ずつ出す表示ではその選び方ができず、すべての語が一定の速さで押し寄せるため、追いつけなくなるのは作業記憶の側だと説明されます(作業記憶)。話し手自身も、この方式で30秒読むと直後の細部が思い出せないと述べています。

戻り読みを奪う: もう一つの弱点は、いま読んだところへ戻れないことです。動画は2014年の研究を引き、先へ進んだあと戻って読み直す動きが理解の高さに欠かせないと述べます。そのうえで、読み手がどこで戻る必要があるかはソフトの側には正確に予測できないと指摘します。読み返しを仕組みとして封じてしまう、という筋です。

使える範囲だけ残す: 結論は、学ぶために読む場面では3つとも否定される、ただしまったく無用ではないというものです。短い連絡文やメールに目を通す、拾い読みで大筋をつかむといった用途には使える余地があると言います。一方で教科書を深く読むとき、本から何かを学ぶために読むときには勧めないと述べて終わります。