望ましい困難
学びの言葉
その場では手間だが、あとの思い出しやすさを上げる難しさ
どういう意味?
練習しているあいだの出来は下がるのに、後の思い出しやすさは上がる種類の手間を指します。Bjork が1994年に名づけた言葉です。間をあけて復習すると、その場では思い出しにくく感じますが、後日のテストには残ります。手応えと後の成績が逆を向くことがあるので、練習中の出来を物差しにすると技の選び方を誤ります。
どこで出てくるか
この図鑑が手応えの悪い技を並べている理由がここにあります。間をあけて再読するのように間を置く形や、閉じてから思い出す形は、進んでいる感じを弱めます。だからわかった気に引かれると、楽に感じるやり方へ戻りやすくなります。裏づけの厚い技を選ぶときの物差しになるので、進みの遅さだけで見切らずに済みます。順番を決める物差しは、後日の成績の側に置きます。
取り違えやすいところ
手間を増やせば伸びる、と読むと逆になります。読みにくい書体で読ませる工夫は、当初の報告のあと追試が割れました。束ねたメタ分析は効果なしと結論しています。土台の知識がない段階では、手間がただの負担に変わります。望ましいかどうかは技ごとに確かめるもので、難しさ一般の話ではありません。裏づけが厚いのは間をあける形と思い出す形です。
解説動画(海外・英語): robert bjork - desirable difficulties: slowing down learning/gocognitive
速く伸びる条件: この語を名づけた研究者本人が話しています。人の学習には上達が速く見える条件があり、手がかりが決まっていて予測しやすく、同じ内容をまとめて練習する形がそれだと言います。ところがその裏返しにあたる条件のほうが、後の保持と、別の場面への持ち出しを助ける——直感に反する事実から入ります。
望ましい困難: ばらつきを入れる、間をあける、読み直しではなく思い出す練習をテストの形で入れる、学ぶものをインターリービングで交ぜる、時にはフィードバックを減らす。こうした条件をまとめて、昔ある章で望ましい困難と名づけたと語ります。どれも見かけの上達を遅くします。
なぜ望ましいか: 望ましいと言えるのは長く覚えていられる度合いと持ち出しを高めるからで、困難と言えるのは実際に負荷になり、学ぶ本人から見て上達の速さが落ちるからです。二つの面が同時にあるので、当人には値打ちが分かりにくく、教える側が不満を持たれることもあると述べます。
速い進みの落とし穴: 逆に、上達が速く見えるやり方は本人に喜ばれます。速く進んでいる感じは誰でも欲しいものだからです。ただしそうした条件はあとの学習を支えないと述べます。だから教える側も学ぶ側も、目先の出来や手応えの良さではなく長い目で見た学習の目標に目を置き直す必要がある、という言い方をしています。
組み方が変わる: 例として講義の計画表を挙げます。ひとつの話題をまとめて扱い、テストをして次に移る形になりがちですが、一年後も覚えていてほしい概念は何度も出てくる必要があり、教える側が示すのではなく学ぶ側に出させる形にし、他の要点と結び直す。そう組めば構成は変わると述べます。