土石流

地形と大地

水と土と石がひとかたまりで下る流れ

どんな流れ?

大雨のときに、水と土と石と流木がひとかたまりになって谷を下る流れです。速さは時速二十から四十キロほど、先頭には大きな石が集まった壁ができ、その後ろを泥の本体が押していきます。地鳴りのような音や川の急な濁りが先に届くことがあり、気づいてからは数分しかありません。

なぜ起きるか

雨水が斜面の土にしみ込むと、粒と粒のすき間の水圧が上がり、粒どうしを押さえつけていた摩擦が効かなくなります。支えを失った土砂は重力で滑り出し、水と混ざって水の一・五倍から二倍の重さの流体になります。これは非ニュートン流体に近いふるまいをし、同じ速さでも押す力は水よりはるかに大きく、家や橋を横から倒します。その場で雨が降っていなくても、上流の雨や崩れた土のダムの決壊で起こります。

どこで見られるか

谷の出口に広がる扇状地は、過去の土石流が積み上げてできた地形です。起きやすいのは大雨や台風の最中と直後、それに火山灰の積もった山。前ぶれとして川の水が急に減る、濁る、山鳴りがする、流木のにおいがすることがありますが、何の前ぶれもなく始まる場合もあります。音や濁りは、上流で何かが起きた知らせです。

危険と注意

前ぶれを待って判断しないでください。谷筋から直角に離れて高いところへ動くのが基本で、暗くなってからの移動はかえって危険です。判断は自分の目ではなく、土砂災害警戒情報と自治体の避難情報に合わせます。危険度の分布は気象庁が地図で出しているので、雨の前に自宅の位置を見ておくと迷いません。

解説動画(海外・英語): Analyzing bulk flow characteristics of debris flows using their high frequency seismic signature/WSL Workshops & Seminars

イルグラーベンの現場: 舞台はイルグラーベン流域。ヨーロッパアルプスでも土砂の動きが最も激しい場所のひとつで、土石流や土砂を運ぶ流れが年に5回以上起きる。多くは小さいか中くらいの規模で、体積は10万立方メートル未満。土石流は水と砕けた岩、大小さまざまな破片が混ざったもので、土砂の濃さと動きやすさのせいで破壊力が大きい。

直接触れないと測れない: スイス連邦研究所WSLはここで何年も観測を続けてきた。土石流が来るたびに流体の圧力・速さ・重さ、それに流れの高さを測る。ただしこれらは流れに直接触れる装置が要るので、測れるのはほとんどが谷の下流側になる。土石流が生まれる上流部は人が入れず、でき始めの様子は分からないままだった。

地面の揺れで居場所を追う: そこでWSLとチューリッヒ工科大学が2017年から、季節ごとに地震計の配列を設置している。土石流は流れ下るとき地面に力を及ぼし、それが地面の揺れになる。この揺れを手がかりに、土石流がいつどこにいるかを突き止め、動きの性質まで読み取れる。流れに触れずに済むので、人が入れない上流でも観測できる。

力の鎖が揺れを作る: Zhen Zhang らの論文は、土石流の中の粒子が地面とぶつかって力を伝える仕組みを新しく組み立てた。揺れを作るのは粒ひとつの衝突だけではなく、複数の粒がつながった力の鎖の衝突でもある。現地で丁寧に較正した結果、地震のデータから流れの厚さと重さが読めるようになった。早期警報の設計や被害の軽減、地形の変化のモデル化に使える。