酸っぱくなったら腐っている

発酵と腐敗

酸っぱくなったら腐っているは誤りで、酸味は乳酸菌が腐敗菌を防いでいる証拠であり、区別すべきは匂いです。

よく言われること

「糠漬けが酸っぱすぎる」「ヨーグルトが酸っぱい」=腐り始めた合図。

実際はどうか

乳酸菌が作る酸は、腐敗菌が増えられない環境を作っているものです。安全性という面では、酸っぱいほうがむしろ守られている方向になります。酸味が強いのは「行きすぎ」であって「腐敗」ではありません。米国ジョージア大学の家庭食品保存センター(NCHFP)は、漬物の酸度は味や食感だけでなく安全性そのものに直結すると説明していて、製品全体で酸のレベルが均一に保たれていないと、ボツリヌス菌の増殖を防げないとしています。レシピの酢や塩の分量を自己判断で減らしてはいけないのはこのためです。区別するのは匂いです—— 酸味のある匂いではなく、腐敗特有の不快な匂いやアンモニア臭が出ているなら別の問題です。

なぜ広まったか

日常の食品では「酸っぱい牛乳」「酸っぱいご飯」が実際に腐敗のサインなので、その経験が発酵食品にも当てはめられました。牛乳やご飯には守る酸がもともと無い、という前提の違いが抜けています。韓国のキムチ研究チームは、新鮮なキムチ(pH5.6・酸度0.45%)から過発酵(pH3.8・酸度1.38%)まで、酸味が連続的に強まることを熟成段階の指標にしています。この変化自体は実在し、腐敗ではありません。

どう言えば正しいか

「酸味が強くなるのは発酵が進んだ結果。腐敗かどうかは酸味ではなく匂いで見る」が正しい言い方です。

出典

  1. 公的機関・英語 National Center for Home Food Preservation, University of Georgia General Information on Fermenting
  2. 論文・英語 Oun AA, Roy S, Shin GH, Yoo S, Kim JT(2023) pH-sensitive smart indicators based on cellulose and different natural pigments for tracing kimchi ripening stages

解説動画: 発酵と腐敗の違い分かりますか?【ゆっくり解説】/ゆっくり雑学ちゃんねるEX

線を引くのは人間: 菌の側に発酵と腐敗の区別は無く、どちらもただの分解だと動画は言います。辞書や教科書も、人にとって有益な分解が発酵、有害な分解が腐敗、としか書いていません。図書館にもっと厳密な定義はないかと問い合わせが来ても、それ以上の答えは出てこなかったそうです。線を引いているのは人間の都合だという入り方をします。

酸が腐敗菌を追い出す: 保存の手口の一つ目として、乳酸菌が糖を食べて酸を出し、場が酸性に傾くやり方を挙げます。腐敗菌はpH5.5以下でほとんど増殖できず、食中毒菌の多くもpH5以下で伸びが止まり、pH4以下では病原菌の生育が起きないと説明します。好むのは中性付近なので、酸性でもアルカリ性でも追い出せるという整理です。

匂いの向きが変わる: 分解される材料によって行き先が変わると言います。糖やデンプンが分解されると酸やアルコールになり、酸っぱい・香ばしい方向へ進みます。タンパク質が分解されるとアミンなどになり、こちらが腐敗の方向です。硫黄を含むアミノ酸からは硫化水素ができ、卵が腐った匂いになる例を挙げます(腐敗のにおい(酸味との違い))。

数値では決まらない: 分解の進み具合は測れるとして、揮発性塩基窒素という指標を挙げます。100gあたり5〜10mgなら新鮮で、30を超えると初期腐敗、50を超えたら腐敗という線です。ところが伊豆の島に伝わるくさやの漬け液は、数値の上では振り切れているのに、何百年も継ぎ足されて家宝として受け継がれてきたと紹介します。

先に酸で席を埋める: 保存とは腐敗を止めることではなく、望む菌を先に勝たせて席を埋めてしまうことだとまとめます。酸で場を押さえてしまえば、後から来た菌はもう入れません。動画は匂いを分解がどこまで進んだかの目印と呼びます。