耐塩性酵母(ジゴサッカロミセス)

酵母

耐塩性酵母(ジゴサッカロミセス)は、高い塩分や糖度でも生きられる酵母で、醤油や味噌の熟成後期に香りを作ります。

どんな菌?

高い塩分や高い糖度でも生きられる酵母です。醤油や味噌の熟成後期に働き、あの独特の香ばしい香り(HEMFなど)を作るのがこの酵母。一方で、ジャムやシロップを腐敗させる原因菌でもあります。スペインの大学(マドリード工科大学)の研究チームによるレビューは、同じ属の酵母について、ワインの再発酵で二酸化炭素を出す腐敗のほか、果汁・清涼飲料・サラダドレッシングでも好ましくない風味の原因になると整理しています。

何をするか

耐塩性乳酸菌がpHを下げたあとに登場し、糖からアルコールと香気成分を作ります。醤油の「いい匂い」は、麹の分解と乳酸の酸味の上に、この酵母の香りが乗ってできています。中国・華南理工大学のチームがまとめたレビューは、醤油の醸造で報告された耐塩性酵母は23属にのぼるとし、香りづくりの主役としてこの酵母のほか Candida versatilis と Pichia guilliermondii を挙げています。

好む環境

塩分18%前後、糖度60%以上でも増えられるという、ふつうの菌が動けない環境が得意です。酸素が少なくても働きます。

関わる食品

醤油、味噌、みりん。同じ性質のせいで、ジャム・はちみつ・濃縮果汁で膨張や発泡を起こすことがあります—— 甘いものが発泡していたら、この仲間を疑ってください。四川大学の研究チームは、醤油の二次仕込みを30℃で温度管理すると有害な生体アミンがかえって47.88%増えたのに対し、この酵母と近縁のWickerhamiella versatilisを加えて仕込むと87%以上減り、うま味や好ましい香りも増えたと報告しています。

出典

  1. 論文・英語 Escott C, del Fresno JM, Loira I, Morata A, Suárez-Lepe JA(2018) Zygosaccharomyces rouxii: Control Strategies and Applications in Food and Winemaking
  2. 論文・英語 Ma J, Wang J, Huang X, Huang M, Zhao M, Feng Y(2025) Salt-Tolerant Yeasts in Soy Sauce Fermentation: Community Dynamics, Flavor Contribution, and Microbial Interactions
  3. 論文・英語 Zhang L, Zhang Y, Huang J, Zhou R, Wu C(2025) Temperature-driven functional microbial interactions in soy sauce fermentation: Effects of Zygosaccharomyces rouxii and Wickerhamiella versatilis on flavor enrichment and biogenic amine reduction