産膜酵母

酵母

産膜酵母は、漬物や味噌の表面に白くなめらかな膜を張る酵母の総称で、カビと間違われますが無害です。

どんな菌?

漬物や味噌の表面に、白くなめらかな膜を張る酵母の総称です(ピキア属など)。カビと間違えられて捨てられることが最も多い相手ですが、正体は酵母で無害です。酸素のある液面でしか増えられないので、必ず「表面」に出ます。

何をするか

四川農業大学のチームが四川の漬物「泡菜」を調べた研究では、膜をつくる微生物が漬け汁の有機酸を消費し、膜が出たあとにpHがわずかに上がりました。シンナーのような臭いが出ることがあります。八戸工業大学のチームは、大豆発酵食品「ごど」から分離した酵母を加えると25℃の保存でその臭いと白い膜が再現された、と報告しています。

好む環境

酸素が必要です。西華大学のチームが四川の泡菜を64日発酵させた実験では、空気に触れ続けた漬物は32日目までに、ときどき触れた漬物は48日目までに膜が出ました。空気に触れさせなかった漬物は、香りと食感が保たれました。「ごど」の酵母は、増殖が低温では抑えられ、NaClでは抑えられませんでした。発酵の解説チャンネルのClean Food Livingも、気温が低いと遅く高いと速いと説明しています。

関わる食品

野菜の漬け汁の表面に出ます。毛羽立たず丸い斑でもない白い膜は産膜酵母で安全、とイリノイ大学の普及機関は説明し、ぬめりや腐ったにおいがあれば捨てるよう書いています。味噌では、モコモコしない白〜薄茶の点々が産膜酵母だと、のだみそチャンネルは話します。Clean Food Livingは、発酵が終わってから重石を外して膜をすくい、冷蔵庫に入れて再発を抑える手順を示しています(→白い膜(産膜酵母))。

出典

  1. 公的機関・英語 University of Illinois Extension Fermenting FAQ
  2. 論文・英語 Xian S, Li Y, Liu X ほか(2024) Impact of microorganisms on key processes of organic acid metabolism during the occurrence and disappearance of paocai pellicle
  3. 論文・英語 Rao Y, Qian Y, Tao Y ほか(2019) Influence of oxygen exposure on fermentation process and sensory qualities of Sichuan pickle (paocai)
  4. 論文 本田洋之・小原洸瑠・川村優香・松塚祐伍・阿部尚人(2024) 大豆発酵食品「ごど」からの酵母Wickerhamomyces anomalusの分離とその性質
  5. 動画・英語 Clean Food Living KAHM YEAST on FERMENTED VEGETABLES (How to identify & what to do about it)
  6. 動画 のだみそチャンネル 味噌に生える白カビとその他の見分け方と対処方法│産膜酵母、白カビ、アミノ酸など

解説動画: 【糠床が白くなった時の対処法】=糠床の表面に白い膜が張ったら・・=/毎日ふつう

白くなるのは夏場: 糠床は毎日かき混ぜるものだが忘れる日もある、そういうときに表面が白くなることがある、という切り出しです。気温が高い夏場や湿度の高い梅雨時になりやすいと言い、涼しい時期は一日ぐらい忘れてもそこまで神経質にならなくていいが、夏は一日でも混ぜ忘れるとこうなると続けます。冷蔵庫に入れれば起きないものの、発酵が止まって糠床が休眠するとも言います。

正体はカビでない: 白い膜の正体はカビではなく、産膜酵母と呼ばれる菌だと明かします。害はなく、しっかり発酵できている証拠と思って大丈夫だと言います。白くなった自分の糠床を映しながら、これがその状態だと見せます。かき混ぜずに表面が酸素に長くさらされることで育つので、混ぜる手が止まっていた時間がそのまま出ているだけ、という受け止め方です。

表面だけに出る理由: 酵母は酸素がなければ育たないため、酸素のある表面にだけ現れます。逆に乳酸菌は酸素が苦手で、糠床の中のほうだけで活発に働いています。だから中の乳酸菌が活発だからこそ、表面の膜も活発に出てくるという見方を示します。上と中で住み分けていて、膜が出ること自体を中で発酵が進んでいる裏づけとして読んでいます。

カビとの見分け方: 産膜酵母は表面が一面に白くなるのに対し、カビはところどころに現れ、ふわっとしていると言います。カビは糠床の表面だけでなく糠床の縁のカビのように容器のほうにも出てくるので、そこですぐ分かるとも続けます。指が触れて一部だけ膜が切れた場所も映しながら、白い範囲がどこまで広がっているかで見よ、という見分け方です。

取らずに混ぜ込む: 白い膜は取らなくても大丈夫で、むしろ混ぜたほうが美味しい糠床になると言い切ります。膜が張ったときに漬かっていたものも、そのまま食べてかまわないと言います。塩を足すなら舐めてしょっぱいと感じたところで止める、一度にたくさんは入れません。これから始めるなら涼しい時期からのほうがいい、とも勧めます。