黄色ブドウ球菌

入ってはいけない菌

黄色ブドウ球菌は、人の皮膚や鼻に普通にいる細菌で、食品中で増えると熱に強い毒素(エンテロトキシン)を作ります。

どんな菌?

人の皮膚や鼻の中に普通にいる細菌です。川崎市中央卸売市場食品衛生検査所は、健康な人の約30%が手指や鼻腔、消化管にもっていて、化膿した傷にはとくに多いと説明しています。エンテロトキシンを作る株が食品の中で増えると、毒素が食品にたまります。食中毒は、菌そのものではなく、この毒素が先にできた食品を食べて起こります。毒素の型は20種類以上あります(Hennekinneらの総説)。

何をするか

菌そのものは加熱で死にますが、いったんできた毒素は熱に強く、通常の加熱では壊れません。川崎市中央卸売市場食品衛生検査所は「100℃30分の加熱でも無毒化されない」と説明します。国立健康危機管理研究機構によると、2000年の雪印の加工乳による食中毒(患者13,000人超)では、菌は検出されず毒素のエンテロトキシンAだけが検出されました。食べて数時間で、激しい吐き気・嘔吐と腹痛、下痢が出ます。

好む環境

塩10%の培地でも、72時間後には対照と同じ勢いまで増えました。塩20%では72時間たっても増えませんでした。ブドウ糖は増殖も毒素の産生も抑え、毒素のB型はA型より強く抑えられました。これは食中毒の患者から分けた1株を培地で育てた実験(Huら、2025年)です。同じ株を25℃と37℃で比べた2026年の報告では、ブドウ糖入りの培地でA型は25℃のほうが多く、常温に置く食品は油断できません。

関わる食品

仕込みでは、手に傷があるときは直接材料に触れないでください。川崎市の食品衛生検査所は、弁当・おにぎり・サンドイッチなど素手で扱って作る食品を原因の例に挙げます。国立健康危機管理研究機構は、予防の要点として手洗い、10℃以下の保存、化膿した手指の人が食品に触れないことを挙げます。使い捨て手袋を使うか、その日は仕込みを見送ってください。

出典

  1. 公的機関 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト ブドウ球菌食中毒
  2. 公的機関 川崎市中央卸売市場食品衛生検査所(2025) 細菌による食中毒 ~黄色ブドウ球菌~
  3. 公的機関 山口県(生活衛生課)(2021) 黄色ブドウ球菌による食中毒
  4. 論文・英語 Hennekinne JA, De Buyser ML, Dragacci S(2012) Staphylococcus aureus and its food poisoning toxins: characterization and outbreak investigation
  5. 論文・英語 Hu Z, Zhu Z, Ono HK, Hirose S, Hara-Kudo Y, Li S, Hu DL(2025) Effects of Nutritional Conditions on Growth, Biofilm Formation, and Enterotoxin Production in Staphylococcus aureus Associated with Food Poisoning
  6. 論文・英語 Hu Z, Ono HK, Zhu Z, Hirose S, Hara-Kudo Y, Li S, Hu DL(2026) Interactive Effects of Temperature and Nutrient Conditions on Growth and Virulence Factor Expression of Staphylococcus aureus Under Model Food-Relevant Environments