プロピオン酸菌
酢酸菌・その他
チーズの穴を、開けている菌
どんな菌?
エメンタールチーズ(アニメで描かれる穴あきチーズ)の穴を作る菌です。乳酸菌が作った乳酸を食べて、プロピオン酸と酢酸と二酸化炭素に変えます。この二酸化炭素がチーズの中に閉じ込められて、丸い穴になります。
何をするか
乳酸を分解して、ナッツのような甘い風味(プロピオン酸)を作りながらガスを出します。つまり穴と風味は同じ働きの結果で、片方だけを取ることはできません。
好む環境
20℃前後のやや高めの熟成温度で活発になります。酸素を嫌います。熟成庫の温度で穴の大きさが変わる—— 高いほど大きな穴になります。
関わる食品
エメンタール、グリュイエール、ジャールスバーグ。「穴が大きいほど熟成が進んでいる」わけではなく、温度管理の結果です。
解説動画: なぜスイスチーズの「穴」は、現代になるほど消え始めているのか【ゆっくり解説】/ゆっくり台所研究所
穴を作っている3種: エメンタールの製造には3種類の菌を使うと説明します。まず2種類の乳酸菌が乳糖から乳酸を作り、そのあとにプロピオン酸菌が乳酸を食べて、二酸化炭素とプロピオン酸に変えます。熟成庫は19〜24℃という温かさに保たれていて、そこに数か月置くあいだにこの菌が活発になります。3種が順に働いて1つのチーズになる、という組み立てです。
ガスが穴になるまで: 外側の皮が硬く、生まれた二酸化炭素は逃げ場がありません。ガスは弾力のある生地を内側から風船のように押し広げ、丸い空洞になります。同時に生まれるプロピオン酸が甘くナッツのような風味を作る。この説明は1912年と1917年に発表された論文以来、100年以上世界中の教科書に載り続けたと述べます。
穴が消えた20年: ところが1990年代後半から自動搾乳システムが広がり、ミルクが外気に触れないまま運ばれるようになると、穴が減り始めました。決められた温度で菌も入れているのに開かず、穴の無いものや、行き場を失ったガスが生地に入れた亀裂が続出します。品質の低下から閉鎖に追い込まれた工房もあったと語ります。
核になっていたもの: 2015年、スイスの研究機関が原因を発表します。干し草の細かなちりが毛細管に抱え込んだ空気が核になり、そこへ二酸化炭素が集まって泡になっていた。熟成中の内部をCTスキャナーで追い、混ぜる干し草の粉末の量を変えた実験で穴の数との関係を確かめたとし、シャンパングラスの底から泡が立つのと同じ原理だとします。
菌だけでは開かない: 解決は干し草の粉末をひとつまみ戻すことでした。巨大なチーズ1個に対してナイフの先ほどの量で穴が復活し、毛細管を持たない粒を混ぜたときは開かなかったとも述べます。プロピオン酸菌が作るのはガスと風味で、それが穴の形になるかどうかは生地の側の条件しだい。ひとつまみのちりの有る無しで、同じ菌でも結果が変わっていました。