時間

時間

止めどきを決めるのは、時計ではなく状態

なぜ効くか

発酵は連続的に進むので、「完成」という決まった点はありません。どこで止めるかは好みで決まります。味噌を半年で食べるか2年寝かせるかは、正誤ではなく選択です。

目安

塩麹は1〜2週間、甘酒は6〜8時間、ヨーグルトは6〜8時間、糠床の立ち上げは2週間、味噌は半年〜2年、醤油は1年以上。これらはすべて温度が前提の目安で、温度が違えば時間も変わります。

外れたときの症状

早すぎると味が乗らず、遅すぎると酸味と苦みが出ます。記録をつけるのが最も確実な対策です—— 仕込んだ日、温度、途中で見た様子、食べた日と感想。次の仕込みで、自分の環境に合った時間が分かります。同じレシピでも、家ごとに正解の時間が違うのが発酵です。

解説動画: 発酵と腐敗と熟成は科学的にどこが違うのか/料理のなぜを科学する【ゆっくり解説】

発酵と腐敗の境目: 発酵も腐敗も、微生物が酵素という鋏で大きな分子を切り刻む同じ分解だと説明している。タンパク質をアミノ酸に、デンプンを糖に分けているのは菌にとってはただの食事で、そのとき出たものが人間に役立つ旨みやアルコールなら発酵、アンモニアなどなら腐敗と呼んでいる。仕組みそのものに違いはなく、分けているのは人間の側の都合だとしている。

熟成は発酵と別物: 熟成は微生物の働きではなく、食材自身の酵素の働きだと区別している。牛肉なら死んだ後も筋肉の中の酵素が動き続け、自分の繊維を分解する(自己消化)。だから肉は柔らかくなり、タンパク質が分解されてアミノ酸が増えるので旨みも濃くなる。ただし表面には菌やカビが付くので、温度と湿度を管理できなければ、ただ腐った肉になる。家庭の冷蔵庫に肉を放置するのは熟成ではないと釘を刺している。

置きすぎたときの危険: 時間が経ってからでは取り返せない例を挙げている。カビは見えているふわふわの部分だけでなく食品の奥まで菌糸を伸ばしていて、カビ毒は加熱しても分解されないので、削れば食べられるという言い伝えは否定している。鮮度が落ちた魚にできるヒスタミンも熱に強く、一度できたら加熱では消えない。酸素のない密閉環境で増えるボツリヌス菌は、増えても味も匂いもほとんど変わらない。

自家製の保存食で注意すること: 真空パックや瓶詰め、自家製のオイル漬けは、酸素を嫌うボツリヌス菌にとって都合の良い環境になる。菌は熱に強い殻(芽胞)をつくるので、家庭の鍋で100℃で煮た程度では死なず、120℃で数分以上の加圧加熱が要る。市販のレトルトが安全なのはこの工程を通しているからで、開けたときに容器が膨らんでいたり、プシュッとガスが出たら食べずに捨てるよう勧めている。