トマト
野菜
トマトは、加熱するとうま味の塊になる
どんな食材?
生で食べる野菜という印象が強いですが、グルタミン酸を含む「うま味食材」でもあります。加熱すると、グルタミン酸と組むとうま味が強まるグアニル酸が増えます。農研機構の解説では、オーブン250℃で15分加熱したとき平均1.8倍に増えました。日本の論文は調理用9品種と生食用2品種の全てで増えたと報告し、50〜60℃で蓄積が最大と考えました。
選び方・旬
ヘタが濃い緑でピンとしていて、おしりに白い放射状の筋(スターマーク)が出ているものが完熟の目安です。手に持って見た目より重いものは水分と味が詰まっています。旬は夏ですが、味が濃いのはむしろ春と秋のものです。
下ごしらえ
湯むきするならおしりに十字の切り込みを入れて熱湯に10秒、すぐ氷水へ。皮が自然にめくれます。英国のレディング大学の研究は、13品種の全てで、種を含む内側のパルプのほうが外側の果肉よりグルタミン酸が多いと報告しました。平均は果肉1.26 g/kg、パルプ4.56 g/kgでした。種のまわりごと使うと、うま味を生かせます。
保存
冷蔵庫に入れると味が落ちます。フロリダ大学などのチームは、風味に関わる香り成分が12℃未満の温度に弱く、失われると風味が大きく落ちると報告しました。20℃に戻しても、香りをつくる酵素の遺伝子の働きが戻らないものがありました。農研機構の資料では、最適な貯蔵温度は完熟が8〜10℃(限界1〜3週間)、緑熟が10〜13℃(限界2〜5週間)です。冷やしすぎないのがコツです。
出典
- 論文・英語 Zhang B, Tieman DM, Jiao C, Xu Y, Chen K, Fei Z, Giovannoni JJ, Klee HJ(University of Florida・Zhejiang University)(2016) Chilling-induced tomato flavor loss is associated with altered volatile synthesis and transient changes in DNA methylation
- 論文・英語 Oruna-Concha MJ, Methven L, Blumenthal H, Young C, Mottram DS(University of Reading)(2007) Differences in glutamic acid and 5'-ribonucleotide contents between flesh and pulp of tomatoes and the relationship with umami taste
- 論文 安藤聡・坂口(横山)林香(日本食品科学工学会誌 62(8))(2015) トマトの加熱調理によるグアニル酸生成およびその品種間差
- 公的機関 農研機構(2015) トマトのうま味成分グアニル酸が加熱調理で増加
- 公的機関 農研機構(2025) 青果物の最適貯蔵条件
解説動画: トマト缶の使い分けと、酸味を丸くする煮詰め方/ファビオ飯 /イタリア料理人の世界
トマト缶の使い分け: 同じトマトでもホール・カット・ピューレ・裏ごし(パサータ)・生があり、用途で選び分けるものだとしている。カットはホールを切ってあるぶん、風味と香りが飛んでいるので軽いスープ向き、ソースには水分と香りが中に残っている丸のままのホールを使う。裏ごしタイプは工業的に作られたものだと火が入っていて酸味が落ち着いており、そのぶん扱いやすいという。
缶トマトの掃除: 丸のまま入っているので、まず口に残る上の硬い部分を取り除く。さらにきれいなソースにするなら裏ごしして種と皮を外す。残っても雑味として悪くないという考え方があると断ったうえで、仕上がりを取るなら外すという立場をとっている。外した種と皮は野菜出汁に使えるので捨てない。
酸味は飛ばすのではなく丸くする: レシピ本によくある「強火で水分を飛ばして酸味を飛ばす」という説明に対して、トマトの酸っぱさはクエン酸で、加熱しても全部が消えるわけではないとしている。ホールトマトはそもそも酸っぱい食べ物なので、煮詰めてやっているのは尖った酸っぱさを、柔らかい酸っぱさに変える仕事だという整理になっている。
煮詰め方の目安: 蓋はしない—— 蒸気がこもると水っぽくなるので、逃がしながら中火から強火で詰めていく。ホール3缶(約1.2L)が半分の660gほどになるまでで、表面がボコボコと粘りを見せたら煮上がりの合図。香味野菜はトマト400gに対して玉ねぎ30〜40gにとどめる—— 多く入れるとトマトではなく野菜のソースになってしまう。