裳階
屋根の形
時代: 飛鳥・奈良
本来の屋根の下に付けた、庇のような小屋根です。外から数える重が増えるため、三重の塔でも屋根が六つ見えることがあります。
どんな形か
本来の屋根の下へ、もう一段低く回した庇状の小屋根です。建物の周囲を巡り、内部の床を増やさないまま外観の重だけを増やすため、五重塔や三重の塔では数え方が食い違います。壁や柱の根元を雨と日差しから守る役目もあります。奈良県の薬師寺東塔、神奈川県の円覚寺舎利殿、東京都の正福寺地蔵堂が、指定説明で裳階付とされています。
見分けの決め手
上下の屋根で、柱の間隔と組物の作りがそろっているかを見ます。裳階の側は本屋より簡素で、柱が細く、組物を持たないか簡単な形にとどまる例が多くあります。屋根の出も浅く、上の軒より一段控えます。奈良県の薬師寺東塔は三重塔でありながら各重に裳階が付き、屋根が六つ重なって見えます。上下の軒が大小を交互にくり返す並びも、裳階の付いた塔に特有の見え方です。
取り違えやすい相手
本当の重層屋根と取り違えます。内部の階数と外から見える重の数が合うかどうかが分かれ目で、裳階を数えても中の床は増えません。もう一つは向拝で、こちらは正面の一部だけが前へ張り出します。全周に回るのが裳階、正面だけが向拝と押さえます。富山県の瑞龍寺仏殿も一重裳階付として指定されています。上下の屋根の間に壁と窓が立つかも手がかりで、重層なら床がそこに来ます。
どこに立つと見えるか
塔や堂から十分に離れ、軒の重なりを横から数えます。近づくと上の屋根が裳階に隠れ、重の数が読めなくなります。斜め前からなら裳階の軒と本屋の軒が別の高さで並び、間に壁面が現れます。奈良県の法隆寺金堂は本瓦葺の二重の堂で、初重にだけ裳階が付くため、下の軒だけが二重になる様子が離れた位置から追えます。境内の外の道まで下がると数え違いが起きにくくなります。
読みと表記のゆれ
「もこし」と読みます。裳層とも書かれ、装束の裳に見立てた名という説明が建築史の図集にありますが、命名の由来はまだ定まっていません。指定説明では「一重裳階付」「三重裳階付」のように、本来の重の数へ続けて書かれます。正面だけへ張り出す向拝と並ぶ付加物ですが、回る範囲がまるで違います。外から見た屋根の数で呼ぶ通称とは食い違うため、公称は指定説明の表記に従います。