越屋根
屋根の形
時代: 江戸
大屋根の棟の上に、もう一段の小さな屋根が載ります。煙や湿気を抜き、光を入れるための開口を覆う屋根で、下の建物とは別の棟と軒を持っています。
どんな形か
大屋根の棟をまたいで載る、短い棟と軒を持つ小屋根です。下の屋根に開けた穴をこの小屋根が覆い、その側面が煙と湿気の出口、そして光の入口になります。小屋根そのものは切妻造や寄棟造の形で葺かれ、幅は棟の一部だけのものから棟の全長に近いものまであります。養蚕の建物では大屋根とほぼ同じ長さで載せた例が知られ、側面は板戸か格子で開け閉めできる作りのものもあります。開口は棟に沿って細長く取られます。
見分けの決め手
棟の線が二段になっているかを見ます。大屋根の棟の上にもう一本の棟と短い軒が走り、その下に縦の壁面が現れれば越屋根です。壁面には格子か板戸か窓が入り、抜けているか塞がっているかは近くからでも分かります。屋根の面ではなく棟の上に載るため、横から見た輪郭が階段状になります。小屋根の端に破風板と小さな妻が付く例もあります。近くからは軒も手がかりで、大屋根より短い軒が一段高いところに出ます。
取り違えやすい相手
千鳥破風は屋根の面に載る三角形で、棟の上ではなく斜面の途中に据わります。越屋根は棟をまたぐため、輪郭の出る位置が違います。裳階も紛れますが、こちらは軒の下に付く庇で、奈良県の薬師寺東塔のように下から重を増やして見せるものです。軒が段に折れる錣屋根とも別で、開口を覆うために載せたものかどうかが四つを分けます。棟をまたぐか、面に載るか、軒の下に付くかを順に見ます。
どこに立つと見えるか
建物から離れて棟の線を横から見通せる場所に立ちます。群馬県の富岡製糸場繰糸所は換気のための越屋根が棟に通る例として説明され、同じ群馬県の田島弥平旧宅は蚕室の上に総櫓と呼ぶ越屋根を載せています。京都府の杉本家住宅のような大きな町家では通り土間の上に上がります。現役の住居は敷地の外から見える範囲にとどめます。屋根の上は光が回りにくく、順光になる時間帯を選ぶと側面の格子まで見えます。
読みと表記のゆれ
読みは「こしやね」で、表記は「越屋根」のほかに「腰屋根」も使われ、どちらが本来かは定まっていません。日本国語大辞典は初出として1638年の俳諧を挙げており、近世にはすでに使われていた語と分かります。地方や職種によって「気抜き」「櫓」とも呼ばれ、民家では煙出しと重なる言い方をします。養蚕の建物では「櫓」、工場や学校の図面では「換気塔」と書かれる例もあります。