マガモの繁殖羽とエクリプス

季節で姿が変わる組

夏の雄は、雌そっくりの地味な羽になります。この姿をエクリプスと呼び、緑の頭も首の白い輪も消えますが、嘴の黄色だけは残るので、そこから戻れます。

並べる2種

並べるのは、マガモの繁殖羽の雄と、同じ個体が夏から初秋にかけて着るエクリプスの羽です。繁殖羽の雄は頭が光沢のある緑、首に白い輪、胸が栗色で、水面でもすぐ目に入ります。エクリプスは全身が褐色で黒い斑が散る、雌に近い姿に変わり、頭の緑も首の輪も見えなくなります。日本では秋に渡ってきて春に去るため、渡ってきたばかりの群れには羽が入れ替わる途中の個体が混じります。

決め手になる1点

見るのは嘴の色です。雄は繁殖羽でもエクリプスでも一様な黄色の嘴を持ち、雌は橙色の地に黒い斑が入ります。羽がどれだけ雌に似ても嘴の色は雄のまま残るので、体の色ではなく嘴で雄雌を分けると手順が崩れません。嘴は水を切るたびに向きが変わるので、横顔になった一瞬をねらいます。翼を広げたときに出る翼鏡は雌雄とも青紫で、前後を白い線が縁取ります。こちらはマガモかどうかを決める側の印です。

その1点が使えない条件

嘴の色は光で変わります。逆光と水面の照り返しでは黄色も橙色も灰色に沈み、曇りの日の遠い個体では斑の有無まで見えません。生まれて最初の秋を迎えた若い雄は嘴の黄色がくすみ、雌との差が細くなります。羽が入れ替わっている途中の個体は頭に緑が飛び飛びに出て、雌とも繁殖羽ともつかない姿になります。カルガモとの間に生まれた個体も知られており、嘴だけでは決まりません。

よくある取り違え

多いのは、エクリプスの雄を雌として数えてしまう取り違えです。秋の群れを色で数えると雌ばかりに見え、その池の雄雌の比とずれた記録が残ります。カルガモと混同する例もあり、こちらは嘴が黒く先だけ黄色なので、嘴を見る手順のままで分かれます。雌そのものとの分かれ道はカルガモとマガモの雌が受け持ちます。コガモの雄も夏は同じように地味になり、大きさで先に分けます。

決められないときの引き下がり方

雄雌を決めないまま「マガモ、雄雌不明」と記録するのが引き下がり方です。逆光や、嘴を背に差し込んで寝ている個体では、色だけを頼りにしないほうが記録は正確に残ります。群れの数だけ数えて、内訳は空欄にする書き方でも記録として成り立ちます。羽が変わる途中だと感じたら「換羽中」と一言添えます。換羽という言葉の中身を知っていれば、後で見返したときに迷った理由まで残ります。