毎年同じツバメが同じ巣に帰る

ヒナと巣の思い込み

同じ巣に戻る個体はいますが、多数派ではありません。足環を付けて追った標識調査では、翌年に同じ場所へ戻った割合も、前年と同じ巣に入った割合も、いずれも半分に届いていません。

言われていること

春になると去年と同じツバメが同じ軒先へ帰ってくる、と信じられています。前年と同じ場所に巣ができていればあの個体が戻ってきたと受け取られ、場所を覚えて帰ってくる鳥という物語として語られます。巣立ったヒナもいずれ生まれた家へ帰るという続きが付くこともあり、地域の言い伝えにも、店先の張り紙にも残っています。人の側が待っている話でもあります。

分かっていること

足環による標識調査が実測を出しています。大阪府の商店街を対象にした調査では、翌年に同じ商店街へ戻った個体が約4割、そのうち前年と同じ巣に入ったのは約4割でした。雌雄のどちらかが同じ巣に戻る率は15%ほどと報告されています。同じ個体が同じ巣に帰る例はあるものの、巣を単位に見れば多数派にはなりません。残りの巣には、別の個体が入っていることになります。

どこまで確かめられているか

生まれた場所へ帰るかどうかは、別の数字で見ます。新潟県での標識では、ヒナ6,135羽のうち出生地の近くで繁殖したのは210羽(3.4%)にとどまりました。同じ測り方でもスペインは19%、デンマークは3%と地域差が大きく、一つの値では言い切れません。戻らなかった個体の行き先は追えていません。標識は環境省の委託で山階鳥類研究所が続けている調査です。

なぜ広まったか

同じ軒先に巣がある年が続けば、巣が同じなら個体も同じと結ぶのが自然な読み方になります。前年の巣を別の個体が使い直した場合も、外から見える景色は変わりません。足環の番号で個体を分けるところまでやって、はじめて巣の主が入れ替わったことに気づけます。縄張りの持ち主が替わっても、人の側からは同じ光景として見えるからです。