巣は鳥の家で一年中住んでいる

ヒナと巣の思い込み

巣は住まいではなく、その年の子育て用の施設です。多くの種は巣立ちのあと巣に戻らず、夜は別の場所を選んで眠ります。この眠る場所を「ねぐら」と呼び、巣とは役割が分かれています。

言われていること

軒下や樹上の巣を見て、鳥が一年中そこで暮らしていると受け取る言い方です。空の巣があれば「留守」、冬に使われていなければ「引っ越した」と読み替えられます。この見方に乗ると、巣を外すことは家を壊すことになり、逆に巣がある家には鳥が住み着いているという言い方も生まれます。軒先の巣を落とすかどうかの判断も、長らくこの理解のうえで語られてきました。

分かっていること

巣は産卵と抱卵、ヒナを育てる期間だけの施設で、多くの種は巣立ちのあと使いません。夜を過ごす場所は別にあり、集団ねぐらのように木立やヨシ原へ集まって眠る形をとる種もいます。日本の身近な鳥で、巣をそのまま寝床として使い続ける種はごく少数です。巣とねぐらは、使う時期も選ぶ場所も、選ばれる理由も違います。同じ言葉でひとまとめにしないところです。

どこまで確かめられているか

ねぐらの側には実測があります。日本野鳥の会はツバメのねぐら入りを各地で数えており、繁殖を終えた個体が夕方にヨシ原へ集まって眠ることが調査として記録されています。ムクドリのねぐらの声も同じ現象の表れです。一方で、巣を寝床に使うかどうかを種ごとに調べ上げた一覧は国内に見当たらず、使わない種が多いという言い方までが確かめられた範囲になります。

なぜ広まったか

「巣」を家と訳す言い方が、絵本にも日常語にも根を張っています。巣箱という語が住まいの連想を強め、鳥が帰ってくる場所という物語がそこへ重なります。実際の巣は毎年作り直されたり、別の個体に使い直されたりします。一年中の住まいだと思っていると、空の巣にも手を出しにくくなり、逆に子育て中の巣を軽く扱う判断にもつながります。ずれは両方向に出ます。