カルシウムが届かない
欠乏と過剰の見え方
液に足りていても、先端だけ枯れることがあります。カルシウムは水の流れに乗って運ばれるため、蒸散が少ない時間帯や伸びの速い部位に届きにくくなります。
何を担う成分・数字か
細胞と細胞をつなぐ壁の材料になる養分で、いちど組み込まれると株の中を移りません。運び手は蒸散が根の水を引く流れのほうで、行き先は蒸散の多い外側の葉に偏ります。水が動かない部位には、液に十分あっても届きません。外側の葉は無事なまま、包まれた内側の若い葉と伸びている先端だけが枯れる、という出かたになるのはそのためです。
目安の範囲
フロリダ大学 IFAS の HS796は、トマトの養液のカルシウムを生育段階を通して 150 ppm に置き、最終の pH を 5.8〜6.2 としています。同じ資料はカリウムが多いとカルシウムとマグネシウムの吸収を妨げ、実に尻腐れが出るとも書いています。液の濃さだけで決まる症状ではないという前置きが要ります。
動かすと何が変わるか
液に足しても消えないことがあります。畑のロメインでは土壌のカルシウムの多少と発生とのあいだに関係が見られませんでした(Hartz ら 2007)。効いたのは風のほうで、レタス 'Rex' を24株/m² の湛液水耕で28日育てた試験では、毎秒 1 m ほどの縦方向の送風でほとんど出なくなりました(Moosavi-Nezhad と Meng 2025)。無風の区は葉の 39% に症状が出ています。
測りかたと直しかた
見るのは液ではなく、包まれた内側の葉と、伸びている先端です。外からは見えないので、途中で一株ひらいて確かめます。温湿度データロガーで夜間の湿度を残し、株のまわりの風速の帯の側を先に動かします。濃くすると、かえって水の流れが細ります。見え方は葉先が茶色く枯れると並べて読んでください。
解説動画: 【石灰ちょっと待って】トマト尻腐れ病の正しい理解と7つの対策/けんゆーの農ライフ!
足りていても出る: 動画は、トマトの尻腐れをカルシウム欠乏で起きる生理障害として扱い、菌や虫による病気ではないと最初に断ります。そのうえで、土に足りていない場合ばかりではなく、吸えていても果実まで運べていないことがあると言います。石灰をまく前に、吸収と移動のどちらでつまずいているのかを見る、という組み立てです。
運んでいるのは蒸散: カルシウムが動くのは主に導管の中で、押し上げているのは葉から水が抜ける蒸散が根の水を引く働きだと説明します。だから行き先は蒸散の多い葉に偏り、いちど葉にたまると果実へは戻りにくい。果実の表面からの蒸散は葉に比べてずっと少ないので、流れが果実の方向へ向きにくいと述べます。
出やすい時期: 多いのは開花後およそ7〜14日の、果実がいちばん速く大きくなる時期だと言います。細胞壁を作る材料が要る速さに供給が追いつかないためで、大玉ほど、また気温と湿度が高く日の長い夏に増える。日が長いぶん葉のほうの蒸散が長く続くからです。糖度を上げるために水を切る栽培も、運びを細らせる側に働くと注意しています。
先に動かすところ: 対策には順番があると述べます。まず窒素やカリの与えすぎをやめること——ひとつが突出しても欠けても互いの吸収を妨げ合う、というリービッヒの最小律を引きます。次に茂った葉を減らし、株と株の間をあけて風通しをよくすること(→株のまわりの風速の帯)。乾燥ストレスを与えすぎないことも、同じ並びに置いています。
散布は最後に: ただし葉を取りすぎると光合成そのものが減るので加減が要る、尻腐れの出にくい品種もあると添えます。そのうえで石灰や水溶性カルシウムの葉面散布は、風通しと水の管理を直したあとに試すものだと結びます。入れるのは簡単でも抜くのは難しいので、液に足す前に株の中で行き先が決まる養分として見ておく、という話でした。