なぜを1つ立てる
見た現象に、答えられる形の問いを付ける。
身の回りの流れに気づき、色や煙で筋を見えるようにしたら、次にやることは、驚いたままで終わらせず、答えを探しに行ける形の問いへ変えることだ。マレーシア・サバ大学の教育学者らが、物理の教職志望の学生34人を対象に行った研究は、自由に観察させて質問させると、大半が「これは何か」のような属性を尋ねる問いにとどまり、比べる問いや関係を尋ねる問いはまれだったと報告している。身近な道具を使った問いかけの練習をしたあとは、属性を尋ねる問いから関係を尋ねる問いへ、学生の質問の重心が移ったという。後流やカルマン渦を初めて見たときに浮かぶ「これはなんだろう」も、属性を尋ねる問いの出発点にすぎず、比べる問いへ動かす必要がある。
関係を尋ねる問いにするコツは、2つの場所・2つの条件を並べて、その違いを比べる形に言い換えることだ。学術論文の書き方を解説するScribbrの動画は、良い問いの条件として、1つに絞ること・はい/いいえで終わらないこと・使う言葉を具体的にすることを挙げている。蛇口の水が細くなるのを見て「なぜ細くなるのか」だけで止めると、答えの探しようがない。「落ちて速くなった場所と、まだ速くなっていない場所で、水の筋の太さはどう違うか」まで言い換えると、見比べる対象がはっきりし、水道とコップと紙と扇風機で確かめられる範囲に収まる。
比べる相手を選ぶときは、基本の考え方に並ぶ6つの項目がそのまま型になる。質量保存は、増えた分と減った分が釣り合っているかを数える問いを作る。連続の式は、細い場所と太い場所で、同じ時間に通る量が等しいかを比べる問いになる。運動量保存は、押された分だけ押し返しがあるかを比べ、エネルギー保存は、速さが増えた場所でほかの何かが減っていないかを比べる。圧力とは何かは、どちら側が高いかを比べる問いで、流線は、線が混み合う場所と速い場所が重なるかを見る問いになる。どれも、「なぜ面白いのか」のような、確かめる手段を持たない問いではなく、2つを並べて違いを数えられる問いだ。
1つの観察に、答えを探しに行ける問いを1つだけ付けたら、次はその問いに、6つの考え方のどれが当てはまるかを試す段へ進む。
