漂鳥
暮らし方をあらわす言葉
漂鳥は、国外へは渡らず、標高や緯度の方向へ国内で季節ごとに移動する鳥の区分です。
指すもの
日本の中で季節ごとに住む場所を変える鳥をまとめた区分です。国境をまたぐ渡りはせず、標高や緯度の方向に動きます。夏は里山の雑木林や山地の林で繁殖し、冬は平地の公園や住宅地へ下りてくる型がよく知られています。標高を上下する型は、文献を集めた総説で1,238種、現生の鳥のおよそ1割が挙げられています(Barçante ら 2017年)。この呼び名は、土地から見た関係であって、種に貼られた札ではありません。
見分けへの効き方
去年ここで見た鳥が、今年の同じ月にいるとは限りません。冬に平地の都市公園の芝生と広場で会える鳥が、夏には同じ場所から消えます。いなくなったのではなく上がったのだ、と読み替えられます。ただし種の全部が動くわけではなく、性別や体の大きさ、群れの中の順位で動く個体と残る個体が分かれます。主な要因は食物と天候です(Hsiung ら 2018年)。会えない季節は標高差のある場所へ歩く先を移し、月ごとに有無を書き分けます。
似た語との違い
留鳥との境目があいまいな語です。地域単位で見れば一年中いるのに、個体単位では入れ替わっていることがあり、同じ種が観察地によって別の区分で書かれます。旅鳥は通過するだけ、夏鳥と冬鳥は国外との行き来を含みますが、漂鳥は国内で完結する移動を指します。個体ごとに分かれる動きは、海外では部分的な渡りと呼ばれます。台湾のイワツバメでは、同じ繁殖地の一部だけが冬に低い所へ下りると報告されています(Yang ら 2025年)。
身近な鳥で確かめる
ヒヨドリは、滋賀県の湖岸で春に30日間数えた調査で142群・5,338羽が渡りました。渡る群れは晴れた日の朝6時台から8時台に集まり、居つく個体は悪天候や午後にも飛びます(山階鳥類学雑誌 2009年)。ルリビタキは冬に山から下りるとされますが、日本海を越えて南下した個体も混じります(キヤノン・企業の運営するページ)。個体ごとの動きは、山階鳥類研究所の標識調査の記録の範囲までです。同じ場所の有無を月ごとに書き続けます。
出典
- 論文・英語 Barçante L, Vale MM, Alves MAS(2017) Altitudinal migration by birds: a review of the literature and a comprehensive list of species
- 論文・英語 Hsiung AC, Boyle WA, Cooper RJ, Chandler RB(2018) Altitudinal migration: ecological drivers, knowledge gaps, and conservation implications
- 論文・英語 Yang YW, Hsu BY, Guo JC, Hung CM(2025) Relative brain size explains migratory/resident tendency in birds: Partial altitudinal migration in Asian house martins
- 論文 濱田知宏・近雅博・野間直彦(2009) 滋賀県彦根市の琵琶湖岸におけるヒヨドリ Hypsipetes amaurotis の春の渡りと気象条件との関係
- 資料 キヤノン バードブランチプロジェクト(企業の運営するページ) ルリビタキ(野鳥写真図鑑)
- 公的機関 環境省・山階鳥類研究所 鳥類標識調査
