昭和歌謡

日本のポップス

歌番組の時代に生まれた、言葉の見える大衆歌

どんなジャンル?

テレビの歌番組が中心だったころの大衆歌で、歌詞が最後まで聞き取れることを前提に作られています。テンポはゆっくりめ、音の詰め込みは少なく、そのぶん伸ばしと語尾の処理が全部見えます。伴奏は生の楽器を模した音が厚く、声の高さより太さが問われる曲が多く残っています。

歌い方のポイント

急がずに、語尾を最後まで置くのがこのジャンルの芯です。伸ばしの終わりを切りっぱなしにせず、音量をすっと落として消すと形になります。長く伸びる場所ではロングトーンの支えが要り、節回しの山ではこぶしを一度だけ入れる程度で十分です。入れすぎると古風ではなく雑に聞こえます。

選ぶときの目安

音が詰まっていないので息継ぎに余裕があるのが利点で、速い曲が苦手な人ほど合います。目安は、ふだんの話し声の高さから一オクターブほど上までに旋律が収まっているかどうか。世代の違う人がいる席で出すなら、世代の違う相手と歌うもあわせて見ておくと選び方が変わります。

つまずくところ

ゆっくりな曲は伸ばしの間に音が下がりやすく、語尾で半音ぶら下がるのがいちばん多い崩れ方です。息が足りないと感じたら音量を落として最後だけ支える。もうひとつは思い入れが先に立って強く歌いすぎることで、八割の声量で置くほうが、この手の曲はかえってよく響きます。

解説動画: 【津軽海峡冬景色】ボーカル講座/りかせんせのボーカル講座 (Ringring Lika Sound)

三連のノリに乗る: この時代の曲には、拍を2つに割らず3つに割る三連符で進むものがある。1・2・3、2・2・3と数える流れで、普通に2つへ割っていく動きとは進み方が違う。曲を知っている人向けなので旋律を一音ずつ当てる練習は今日はやらないと断り、ノリと歌い方のほうに時間を使っている。

同じ形が上がったら圧力を足す: 似たフレーズが少しずつ上の音へ移っていく並びは、テンションが上がっていく場所。最初のブロックがこの強さなら次は一段、その次はさらに圧力をかけてと積み上げる。必ずそうとは限らないと断りつつ、同じ強さで並べないことを繰り返し言っている。

語尾は抜かずに置く: ふだんは語尾をスッと抜くよう教えているが、この手の歌は抜かずに最後まで言い切るほうがいい。いちばん低い音で終わる伸ばしも同じ。こぶしは回せる人は好きな位置でよく、迷う人には最低限ここという位置を一つ挙げている。強く出す箇所は頭の音にアクセントを置くと雰囲気が出る。

地声から裏へ返して届かせる: 山になる高い音はいきなり当てにいかない。強めの地声で入り、目的の音より半音から1音下でいったん裏声へひっくり返し、そこから持ち上げて本来の音へ届かせる。柔らかい声で入ると裏に返しにくい。届いたらビブラートは半音幅ほど深く、ゆっくりかける。

大げさに練習して削る: 演歌は押すところと力を抜くところがはっきり分かれるので、どこで押すかを自分で決めておく。景色や遠くの誰かを歌う曲が多く、実際に遠くを見ると声も遠くへ飛ぶ。練習は恥ずかしがらずに大げさにやり、体に入ってから削ぎ落として慣らす。振り切った分が残ってにじみ出るという順番。