1998年 アジア通貨危機とLTCM

通貨と債券

計算が正しくても、資金が尽きれば終わる

何が起きたか

1997年7月のタイ・バーツの急落から、通貨危機がアジア各国に広がりました。1998年8月にはロシアが債務不履行に陥り、その影響で米国のヘッジファンドLTCMが巨額の損失を出して破綻します。ノーベル経済学賞受賞者が参画していたファンドでした。

どれくらい下がったか

アジア各国の通貨は対ドルで数分の一まで下落し、株式市場も暴落しました。LTCMは高いレバレッジをかけていたため、想定外の値動きが数週間続いただけで資本が尽きました。

戻るまでにかかった時間

米国の中央銀行が主導して金融機関による救済が組まれ、市場の連鎖的な崩壊は回避されました。アジア各国の経済は数年かけて回復しています。

ここから学べること

理論的に正しい戦略でも、資金が続かなければ破綻します。「長期的には収束するはずの価格差」に賭けていても、その長期が来る前に追加の担保を求められれば終わりです(追証(おいしょう))。レバレッジは、正しさを待てる時間を奪うということです。

解説動画: アジア通貨危機-新興国経済崩壊の歴史 Chapter5【VOICEROID解説】/ゆはる【国際情勢解説】

ロシアで何が起きたか: アジア通貨危機から1年後の1998年、ロシア経済は低迷していた。石油・ガス・金属といった天然資源の輸出に依存しているため世界景気の動向に影響されやすく、前年のアジア通貨危機で世界経済が停滞したことがそのまま効いた。政治的な混乱も重なる。

理論が現実に追いつかなかった: 金融工学の理論上30万年に一度しか発生しないはずの出来事が、実際のニューヨーク市場では88年の間に48日間あった——数学者マンデルブロの指摘が紹介される。前提が現実と合っていなかった、ということ。

なぜ理論通りに動かないのか: 無数の人間の思惑が複雑に絡み合っているのが経済だから、理論通りに動かない——この一言が、精緻なモデルを組んだファンドが破綻した理由の要約になっている。