一夜漬け
時間術の思い込み
前日にまとめて詰め込めば同じだけ身につくという説
よく言われること
「試験は前日にまとめて詰め込めばいい。日を分けるより効率がよくて、残る量も変わらない」という言い方があります。前の晩だけで点が取れた経験を持つ人は多く、日をまたいで同じ内容に戻る手間のほうが遠回りに見えます。徹夜で押し込んだ話はうまく切り抜けた手口として人にも語られ、次の試験でも同じやり方が選ばれて、間をあける形は試されないままになります。
実際はどうか
明日の一回だけを見るなら、詰め込みが不利だとは言えません。テストまでの間が短いほど差は縮み、詰め込んだ側が上に出る報告もあります。剥がれるのは翌週以降にも同じだけ残るという部分で、測るまでの間をあけると順位が入れ替わります。メタ分析では、日をまたいで同じ内容に戻った側が長く保つと報告されています(間をあける練習)。
なぜ広まったか
試験の直前に詰め込むと、その材料は頭の中でいちばん取り出しやすい状態になります。手応えがあるのでわかった気になりやすく、試験が終われば残ったかどうかを確かめる機会もありません。締切が近いと実際に手は動くので、量が出た記憶だけが後に残ります。数週間後に消えていた分は誰にも数えられないまま、同じやり方が次の試験へ持ち越されます。
どう言えば正しいか
「明日の一回なら詰め込みでも点は取れます。ただし翌週以降に残る量は、日をまたいで戻ったほうが多いと報告されています」と言えば、効く範囲と限界のどちらも落とさずに済みます。試験が終わったあとも使う知識なら間隔をあけた復習のほうへ寄せます(復習の間隔を決める)。徹夜そのものの損得は睡眠の側の話として分けます(睡眠時間を削らない)。
確かめられ方
Cepeda ら 2006 のメタ分析で、間隔を空けた学習が長期の保持で優ると整理されています。最適な間隔は測るまでの期間が長いほど伸びるという形でした(Cepeda ら 2008 も同じ向きです)。ただし表題どおり対象は言葉の想起課題で、技能の上達に同じだけ効くかは別に確かめる必要があります。
解説動画(海外・英語): Spaced Practice: The Effective Alternative to Cramming | UC San Diego Psychology/UCSD Psychology Department
同じ時間を散らす: 動画は、徹夜で勉強したのに点が伸びなかった経験から入ります。そこで置かれるのが、学習を時間の上に散らす分散練習です。試験前に12時間をまとめて詰め込むかわりに、同じ12時間を1週間や1か月に広げる。やることの中身ではなく置き方を変えるだけだと説明されます(間をあける練習)。
予定表に落とす: 要るのは講義要項と予定表の2つだけだと述べます。要項から試験日を拾って予定表に書き込み、同じ範囲に試験までに2〜3回戻るように置きます。第1章を1週目に学び、2週目にもう一度、3週目にまた、という具合で、一度は1〜2時間で足ります。組んでしまえば、あとは従うだけだと言います(復習の間隔を決める)。
読み返しでなく: 効きを上げる工夫が2つ挙がります。1つ目は、勉強するたびに自分を試すこと。ここで言う「試す」は、ノートや教科書を読み返すことではありません。小テストを解く、カードを使う、何も見ずに思い出す、そのうえで答え合わせをする。これを重ねるほど分散練習は効くと述べます(思い出す練習)。
数日前に終える: 2つ目は、試験日の数日前に勉強が終わるよう組むことです。そうすると余りの日ができて、手こずっている範囲だけをもう一度見る、模擬の問題をもう一組解いておく、あるいは休んでおく、といった使い方ができます。動画は、この2つを予定に足すと分散練習はさらに効くと述べます。
後に残るかどうか: 効き目については、100年を超える研究と200件を超える報告が、分散練習を最も効く学び方のひとつとして示していると述べます。要点は、詰め込んだ材料は早く忘れられるのに対し、同じ範囲に戻るたびに頭への入り方が深くなる点です。前夜にまとめるか日を分けるかの二択で結びます。