真空が引っぱるという言い方

圧力の誤解

真空は力を出さない、押すのは大気

よく言われること

「真空が引っぱる」「自然は真空を嫌う」。吸盤は真空の力で壁にくっつき、食品の袋は真空が中身を締めつけていると言われます。装置の名前にも真空が付くので、何も無い空間の側に物を引き寄せる力が住んでいて、真空を強くするほどよく吸い付くという絵で理解されています。

実際はどうか

何も無いところは力を出せません。吸盤は中の空気を追い出しただけで、押さえつけているのは外側にある大気です。だから支えられる重さは大気圧と面積の掛け算が上限で、一平方センチにつき一キロほど、手のひらほどの面積でも百キロ足らずです。真空を強くしても増えませんし、縁からわずかに漏れれば外の空気が回り込んで落ちます。

なぜ広まったか

井戸のポンプで水が十メートルほどまでしか上がらないことに気づくまで、真空が引くという説明が現役でした。大気に重さがあると分かって決着したのに、言い方だけが残りました。今も「真空にすると吸い付く」と語られ、上限が大気圧だという点が抜けるので、もっと強く吸えるはずだという期待が生まれます。

どう言えば正しいか

「真空が引く」ではなく圧力の低い側へ、高い側が押すと言います。ただし液体には例外があり、木の中の水は上から引かれて、つながったまま引っぱりに耐えていると考えられています。耐えきれずに切れると泡になり、キャビテーションと同じことが起きます。気体は押すだけ、液体はときどき引ける、と言い分けます。

解説動画: 【解説編】水の入ったペットボトルが紙にどうして負けるか/ケージとえいすけ

吸い上げではなく押さえつけ: 水を入れたペットボトルが紙に負ける映像の種明かしから入る。スローで見ると、ペットボトルの近くの紙は強く持ち上がるのに、それ以外の部分は何かに押さえつけられたように机へくっついたまま。別の角度から見ても同じで、紙は押さえつけられたのだと見方を変えるところから解説が始まる。

大気圧は空気の押す力: 答えは大気圧。動画はこれを空気の押す力と言い切る。空気にも重さがあり、しかも自由に動き回っているので、ものに当たればその重さが力としてかかる。まわりの空気の量はどこもほぼ同じだから右からも左からも下からも同じくらいの力で押している。この力はほぼすべてのものにかかっていて、人の体でも外の空気と中の空気が押し合っている。

速すぎて空気が入れない: ではなぜあの瞬間だけ差がついたのか。ゆっくり持ち上げるなら、空気は毎秒500メートル進むと言われる速さで一瞬のうちに机と紙のすきまへ入り込む。ところがこの映像は紙が持ち上がるのが速すぎて空気が追いつけず、机と紙の間の空気が極端に薄い状態になった。

押し合いは上側が勝つ: 紙の上にいる空気はいつも通り押し続けるのに、下から押し上げる側は人手不足。押し合いの勝負は上側の勝ちで、その一瞬だけ紙が机に固定され、上に乗っていたペットボトルのほうが押し返された。結論は空気の量の差で上から押す側が勝ったという一点に絞られている。