並んだ船が引き寄せ合う理由

圧力の誤解

並んで走る船が近づく本当の理由

よく言われること

並んで走る二隻が近づいてぶつかるのは、間の水が速くなって低圧になるから吸い寄せられるのだ、と説明されます。ベルヌーイの一言で片づくので、船はいつでも引き合うもの、狭い水路や岸に近づくほど危ないもの、と覚えられます。小舟が大きな船に持っていかれた、という体験談もこの形で語られます。

実際はどうか

半分は当たっています。船体が水をよけるので、二隻の間の狭い通り道では水が急ぐことと圧力が低いことが同時に起き、外側の水のほうが強く押します。押しているのは外の水です。ただし向きは一定ではなく、追い越しの途中では船首どうしが押し返し合う時間帯があり、並びきってから引き合いに変わります。

なぜ広まったか

「吸い寄せられた」という言葉が大きな衝突事故の話とともに広まり、原因はひとつだと思われました。実際は船が作る波の山と谷の位置関係も効いていて、水深が浅いほど強く出ます。説明から「押しているのは外の水」が抜けると、真空が物を引くという昔の言い方と同じ形になり、力の出どころが消えます。

どう言えば正しいか

「吸い寄せられる」ではなく外側の水が内側より強く押すと言います。しかも向きは相対位置で変わるので、いつでも引き合うとは言えません。狭い水路や港の中では、距離を取り、速さを落とすことが操船の決まりになっています。似た見え方の話はシャワーカーテンが内側へ寄るでも起きますが、あちらは原因がまだひとつに定まっていません。

解説動画(海外・英語): Bernoulli's principle/GetAClass - Physics

間に風を通すと寄る: 糸で吊るした二つのボールの間へ送風機で強い風を通す。押し広げられるはずが、ボールは互いに近づいていく。回っているので、風が確かに間を抜けているのが分かる。ホースにつないだ漏斗へゴムボールを入れると飛び出さずに留まり、漏斗を下向きにしても落ちない。水道の流れの横に吊るしたテニスボールも、流れに張りついて斜めの糸のままぶら下がる。

押しているのは外側の水: 動画の説明はこの順序で進む。断面が細くなる管では水の速さが上がる。速さを上げるには力が要るのだから、太い側の圧力のほうが高いはずだ。だから細い所では圧力は上がらずに下がる。原因は速さではなく、前後の圧力差が水を押したこと。この関係を見つけたスイスの物理学者ダニエル・ベルヌーイの名で呼ばれる。

ペットボトルがつぶれる: プラスチックのコップ二つで作ったくびれ管を吹くと、出口が大気圧なのでくびれの中は大気圧より低くなる。壁に挿した管の先の圧力センサーは5キロパスカルの低下、水柱で50センチぶんを示す。管の下端を色水に浸けて吹けば水が30センチ持ち上がり、送風機につなぐと霧吹きになる。ペットボトルをつなぐと外の大気圧に押されてつぶれる。

ベンチュリ管で速さを測る: 管の途中に細い部分を作り、太い側との圧力差を差圧センサーで読むと流れの速さが出る。考案者の名からベンチュリ管と呼ぶ。実演では毎秒12リットルの空気が通り、断面が3平方センチなら中の空気は秒速40メートルという計算になる。工業用はもっと大きく、圧力の損失を小さく保ったまま配管のガス量を測れる。