「吸い込む力」という言い方

圧力の誤解

引く力ではなく、押されている仕組み

よく言われること

掃除機が吸い込む、ストローで吸い上げる、換気扇が空気を吸い出す、注射器で薬を吸う。どの言い方でも、道具の側に引っぱる力があるように語られます。「吸引力」は強さの単位のように使われ、機械が見えない手で空気をつかんで手前へ引き寄せている絵を思い浮かべさせます。詰まったときの「吸う力が弱い」も同じ形です。

実際はどうか

気体は引っぱられません。押されるだけです。掃除機の吸い込みでは、羽根が内側の空気を外へ運び出して中の圧力を下げます。すると外にある一気圧の空気が、下がった側へ向かってノズルへ押し込み、ごみを連れて入ってきます。ストローも口の中を薄くしているだけで、飲みものを持ち上げているのは水面を押す大気のほうです。

なぜ広まったか

手に伝わる感覚が「引かれている」ものなので、言葉もそちらへ寄りました。押している大気は目に見えず、下がった圧力も見えないので、見えるほうの機械が主語になります。二文字で強さを言えて売り文句にしやすいことも効きました。子どものころに覚えた言い方は、あとから理屈を知ってもなかなか置き換わりません。

どう言えば正しいか

日常の会話では「吸い込む」で構いません。仕組みを説明するときだけ、中の圧力を下げ、外の大気が押し込むと言い換えます。強さを比べたいときは、作れる圧力差と運べる空気の量の二つに分けて言います。差が大きくても量が小さければごみは管の途中で止まり、量だけあっても細い隙間からは何も出てきません。

解説動画: 【管工事】正圧・負圧って何? (有)東立空調/東立空調

正圧と負圧という言い方: 部屋の中やダクトの中が周りより圧力が高い状態を正圧(陽圧)、低い状態を負圧(陰圧)と呼ぶ。空調の現場でよく使われる言葉で、部屋の用途や換気の種類・扉の開く向きを決めるときの土台になる、と最初に念を押している。

風は高い圧力から低い圧力へ: 動画は圧力を、空気が持っているエネルギーの大きさとして扱う。そのうえで風は圧力の高いほうから低いほうへ吹くと言い、物が下へ落ちるのと同じだというたとえを添える。だから部屋の内と外のどちらの圧力が高いかで、空気の流れる向きが決まる。

正圧の部屋は第2種換気: 室内が正圧だと空気は内側から外側へ流れ、窓や壁から外気が入ってこなくなるので室内の空気を清潔に保てる。作り方はファンで室内へ空気を送り込むこと。これが第2種換気で、食品工場やクリーンルームに使われている。

負圧の部屋は第3種換気: 逆に室内が負圧だと空気は外側から内側へ流れ、中の空気が周りへ出ていかない。ファンで室内の空気を排気すると負圧になり、これが第3種換気。浴室やトイレに向いているのは、湿気や臭気が周りの部屋へ広がらないから。

点検口は外開きか内開きか: ダクトやチャンバーの点検口には外開きと内開きがあり、中が正圧か負圧かで使い分ける。ファンで空気を排気して負圧になっているチャンバーでは、扉を開けたとき空気は外から内へ流れる。扉は空気の流れに逆らう向きに開けるのが基本なので答えは外開き。扉が急に開いてしまう事故を防げるうえ、気密性も上がるからだと説明している。