乱流は悪いものという思い込み
抵抗の誤解
乱流は混ぜるのが得意でこするのが損
よく言われること
乱流は流れが荒れた状態で、抵抗を増やす悪者だと思われています。層流に保てるならそのほうが良い、乱れているのは設計の失敗、飛行機が揺れるのも乱流のせい、というように、悪い意味だけを背負わされた言葉です。工場でも家庭でも、静かに流すことが良いことだと語られます。
実際はどうか
場面で裏返ります。乱流は混ぜる仕事が得意で、部屋の空気を均し、湯の温度差を消し、燃料と空気を出会わせ、熱を壁から素早く運び去ります。流れが離れるのを止めて、かえって抵抗を下げる使い方もあります。損なのは表面をこする側で、層流と乱流を同じ条件で比べると、乱れた側の摩擦は数倍にもなります。
なぜ広まったか
「乱」という字の印象と、飛行機が揺れたときの記憶が結びつきました。翼や船体では摩擦が主役なので、その世界では乱流は本当に損で、専門の場でもそう言われ続けます。そこだけで正しい結論が、鍋の中や部屋の換気は2か所開けるといった、混ぜたい場面の話にまで持ち込まれました。
どう言えば正しいか
「乱流は悪い」ではなく混ぜるのが得意で、こするのが損と言います。混ぜたいときや剥離を止めたいときは、突起を付けてわざと乱しにいきます。得か損かは、その場でこすれとはがれのどちらが大きいかで決まります。計算も測定もずいぶん進みましたが、乱流そのものは完全には予測できていません。
解説動画: 水理・水工学基礎 NO.31 【水理学】層流と乱流は何で決まる?レイノルズ数「2000」の境界を完全解説!/iLab.
乱流は特殊な現象ではない: 飛行機の揺れ、洪水の河川、勢いよく出る水道水。身の回りの流れの多くはすでに乱流で、特殊な現象ではないと最初に言い切る。共通するのは速さが場所ごとにも時間ごとにも不規則に振れていることで、平均的な流れとその変動を重ねたものが乱流の姿。
層流と乱流の得意不得意: 層流と乱流の性質は正反対。層流は粘性力が支配的で、混ざるのは遅いかわりに圧力の損失が小さい。乱流は慣性力が支配的で、大小の渦のおかげで混ざり方が速い反面、摩擦の抵抗が大きいぶん圧力の損失は増える。優劣を決める話ではなく用途で選び分けるもの、というのが動画の立場。
抑えるのか、使うのか: パイプラインでは摩擦の損失が困るので乱流を抑え込む。反対に化学プラントでは効率よく混ぜたいので乱流を積極的に使う。乱流はコストにもメリットにもなるから、インフラの設計では性質を分かったうえで手なずけることが要る、という締め方。
2000という下限の意味: レイノルズ数は慣性力と粘性力の綱引きの結果で、速度と代表長さが大きいほど乱流寄り、粘りが強いほど乱れが抑えられる。限界レイノルズ数の約2000は乱流が生き残れる下限で、下回ると渦はエネルギーを保てず層流へ引き戻される。超えたら即乱流というわけではなく、外からの擾乱が大きく効く。
層流を保つほうが難しい: 大型の水道管で層流を保とうとすると毎秒1mm程度という極端に遅い流れが要る計算になり、スケールが大きくなるほど流れは必然的に乱流の側へ寄る。速度分布も違って、層流は壁で速度がゼロの放物線状、乱流は中心が平坦で壁ぎわだけ急に変わる。遷移には履歴があり、いったん乱流になると条件を戻しても層流は保ちにくい。